鹿児島県には、昔から伝わる伝統工芸が多く残っています。今回は、なかでも昔から資源として使われた、霧島市の「岩切美功堂(いわきりびこうどう)」の「錫器(すずき)」をご紹介します。
こちらは創業100年余りの老舗の錫器メーカーで、巧みな技を使って細かな作品を多数作っています。その工程は、今でもほぼ手作業で行われており、1/1000㎜単位の精度が必要とされる、まさしく匠の技が光るものです。
定規などを使わず、長い経験から培われてきた技術が素晴らしい製品を作り出し、新しい技術も柔軟に取り入れて、先々に伝統技術を残していこうとされています。
「錫」工芸の歴史

鹿児島県では、鹿児島市谷山にある「錫(すず)鉱山」が1656年に発見され、島津光久公時代に幕府から許可を得て、採掘が始められたといわれています。
「錫」で日用品を製作するようになったのは明治初年からで、「錫器」は、もともと古来薬種の容器として使われていました。
「錫」は、生活の中では性質などあまり知られていませんが、人体に害がないうえに、融点が低く、加工しやすい金属らしく、飲食器や工芸品、大砲の砲身に利用されるなど、幅広く利用されていたそうです。
また、不純物を吸収する性質があり、水を浄化するので、昔から焼酎工場で蒸留器の管に「錫」が使用されていたそうです。
そして、この発見は薩摩藩に大きな利益をもたらすことになり、文明開化の時代に乗って広がっていきました。
「錫」の品質の良さは大久保利通の逸話にあり

鹿児島の偉人として、西郷隆盛や木戸孝允とともに「維新の三傑」と称された、日本の近代化に影響を与えた「大久保利通」も「錫器」を愛用していたそたうで、ある逸話が残っています。
その愛用品とは、錫製でできた茶壺で、100年以上の月日経を経て発見され、中を開けてみたそうです。すると、茶葉の香りや味が少しも損なわれていなかったという、「錫器」の密閉性の高さを証明するようなエピソードが語り継がれています。

現在では、その光沢や品質の良さから、日本だけではなくアジア圏の方々からも人気のある「錫」製品。
食器以外にも、錆びない・壊れない性質から、縁起物として重宝され、お土産やご自宅に購入される方も多くなっているそうです。
「錫」を身近に感じてみよう

霧島市の住宅街に位置する「薩摩錫器工芸館」は、一般の方も立ち寄ることができます。一歩中に入るととても静かな空間に、「岩切美功堂」の「錫器」の数々が並べられています。

展示室・資料室なども完備されていて、「錫」製品の歴史を知ることができたり、座ってゆっくりと過ごすことも可能です。

商品の購入も可能ですが、錫皿にアルファベットや数字の刻印をハンマーで叩いていれる「錫皿の製作体験」(3300円~/1名)ができます。
7歳以上から参加可能で、約1時間で完成するため、当日お持ち帰りが可能です。ご家族やお友達と、ぜひ旅の思い出に世界に一つしかない「錫皿」を作ってみてくださいね。
【薩摩錫器工芸館】
住所 | 鹿児島県霧島市国分中央4-18-2 |
電話番号 | 0995-45-0177 |
営業時間 | 8:00~12:00・13:00~17:30、日曜9:00~12:00・13:00~17:00 |
定休日 | 年末年始(12/31、1/1~1/3) |
入館料 | 無料 |
アクセス | 【電車】JR日豊本線「国分駅」よりバスで約10分、「唐仁町」下車、徒歩約4分/「国分駅」より徒歩約17分 【車】九州自動車道「溝辺鹿児島空港IC」より約15分、東九州自動車道「国分IC」より約10分、「隼人東IC」より約15分 |
駐車場 | 普通車10台、バス2台 |
URL | http://www.satsumasuzuki.co.jp/?mode=f3 |