福山市を訪れたらマストで観光したい「鞆の浦(とものうら)」。写真は鞆の浦のシンボル・常夜燈ですが、一度は目にしたことがあるという方も多いのでは?歴史的・地理的な意義から絶景スポットまで、鞆の浦を徹底解説します。
鞆の浦ってどんなところ?

沼隈半島の南端に位置する鞆の浦とは、鞆港とその周辺一帯のこと。日本で初めて国立公園に指定された瀬戸内海を代表する景勝地です。
2018年には文化庁が認める国内の文化・伝統を語るストーリー「日本遺産」に、鞆の浦の港町文化をテーマとした「瀬戸の夕凪が包む 国内随一の近世港町~セピア色の港町に日常が溶け込む鞆の浦~」が認定されました。また、「朝鮮通信使に関する記憶」がユネスコの「世界の記憶」に登録され、8.6haにおよぶ伝統的な町並みは「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。
ひとつの地域が「日本遺産」、ユネスコ「世界の記憶」、「重伝建」と合わせて3つの評価を受けているのは国内で鞆の浦だけなんですよ。
鞆の浦へのアクセス
鞆の浦へは福山駅南口のバス乗り場から、日中は1時間に3本~5本運行する鞆鉄バスを利用するのが便利です。途中、芦田川や燧灘(ひうちなだ)を眺めつつ約30分。終点の「鞆港」もしくは、ひとつ手前の「鞆の浦」で下車します。
車ならバスと同じルートの県道22号線を通るのもいいですが、少し内陸を走る「グリーンライン」と呼ばれる県道251号もおすすめ。沿道には車を停めて鞆の浦の全景が見られる後山公園展望台など、4カ所のビューポイントがあります。
“潮待ちの港”として栄えた鞆の浦の歴史

東西からの潮流がぶつかり合う瀬戸内の中心・鞆の浦は、風と潮の流れに頼って航海していた時代から海運の要衝でした。瀬戸内海を行き来する船は鞆の浦に寄港して潮目が変わるのを待ったため、「潮待ちの港」として繁栄したのです。

人が集まる場所=布教の拠点となり、今でも多くの古刹が残っています。800年代建立の医王寺と900年代建立の福禅寺は、絶景スポットとして後述します。
海上交通の要所である鞆の浦は、軍事的にも重要な場所でした。戦国時代に入ると毛利氏が鞆要害を築き、備後でも有数の拠点に。また1573年には京を追放された室町幕府15代将軍・足利義昭が鞆へ拠点を移し、その勢力は鞆幕府と呼ばれました。
幕末には公武合体派に追われた尊王攘夷派の三条実美らが滞在し、また坂本龍馬率いる海援隊の「いろは丸事件」の舞台にも。半径500mほどのあちこちに、歴史に名を馳せた人々の足跡が残る鞆の浦は、歴史好き必訪の場所といえそうです。
編集部イチオシ!鞆の浦の6つの見どころ
2日間の取材で鞆の浦をくまなく歩いた編集部。特におすすめしたいのが次の6つのスポット&景観です。
昼も夜も絵になる「常夜燈」

鞆港中央に立つ常夜燈は鞆の浦のシンボル。1859年に建てられ、灯台として船の出入りを誘導してきました。海中の基礎から最上部までは11mあり、石造りの常夜燈としては日本一の大きさを誇ります。

常夜燈の足元には雁木(がんぎ)という石造りの階段状の船着き場が残っています。干満差が最大4mもある鞆港。潮の満ち引きに関係なく積み荷の上げ下ろしができるように江戸時代から工夫されていたのです。

夜はライトが灯され、幻想的な雰囲気に。センサーによって自動で点灯されるため、時間はまちまちですが、日没頃を狙って訪れてみて。
港町の歴史が色濃く残る「町並み」

江戸時代、備後国を領有した福島正則は鞆の浦を城下町として整備。鞆城の築城は徳川家康の意向に沿わず叶わなかったのですが、当時の地割は今でもしっかりと残っています。

鞆の浦の西側には急峻な山々がそびえ、平地はごくわずか。人々が集まる良港であるため、必然的に過密市街地になります。狭い間口の町屋が隙間なく軒を並べる町並みはこうして形成されました。

山裾には約20もの寺社が並んでいます。写真は「祇園さん」と親しまれる沼名前神社(ぬなくまじんじゃ)の参道です。注目は写真奥に見える二の鳥居の上部が反りあがった笠木。鳥が止まっているようにみえるため、鳥衾(とりぶすま)といわれ、とても珍しい形式のものなんです。

航海技術が進歩すると、鞆の浦の海上交通の要としての役割は薄れていきました。鉄道や自動車交通の発展も、陸運経路から外れた鞆の浦には影響及ばず。そのため、歴史の痕跡を色濃く残した町並みが現在も残っているのです。
江戸時代から残る保命酒の蔵元「太田家住宅」

かつては保命酒の造り酒屋だった築約270年の建物で、国の重要文化財。展示施設として帳場から炊事場、茶室、酒蔵まで公開され、お話し上手のスタッフが約20分で案内してくれます。

福山市の特産品でもある保命酒は、漢方とみりんからできる和製リキュール。当時の保命酒屋・中村家は福山藩から保命酒の醸造販売の独占権を許されていて、隆盛を極めていました。建物には最先端の文化が盛り込まれ、粋な意匠が随所に見られます。
写真は入口からすぐの帳場で、開けた障子の先に、中庭の景色が掛け軸のように見えるよう工夫されています。他にも市松模様のモダンな土間や、木と竹を編み込んだ網代天井など、デザイン性の高いインテリアがあちこちに。

主屋を取り囲むように建つのは保命酒が醸造されていた土蔵。瓦と漆喰の海鼠壁(なまこかべ)には、1や4のサイコロの目の模様が。これは1=米を蒸す釜屋、4=酒を仕込む蔵というように、その役割によって数を変えているんです。作業場にまで遊び心を加えるなんて、当主の美意識の高さがうかがえますね。
●営業時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
●定休日:火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/31、1/1)
●料金:入館料中学生以上400円、小学生200円
●電話番号:084-982-3553
●URL:http://tomonoura.jp/tomo/ootake.html
宮崎駿監督がデザインした「御舟宿いろは」

本瓦葺の屋根や漆喰の白壁、ベンガラ塗りの窓枠や柱が残る町屋らしい造り。1階はカフェ、2階は宿泊施設として利用されています。

1階入口そばには宮崎駿監督による外観や内装のイメージスケッチが。スタジオジブリの社員旅行で鞆の浦を訪れた監督は新作の構想を練るため再訪し、完成したのが『崖の上のポニョ』といわれているんです。監督との縁で、このデザイン画をもとに町屋旅館は改装されました。

レトロなステンドグラスが素敵な店内。洋風かと思いきや、ここは旧町役・魚屋萬蔵宅だった場所で、いろは丸事件で坂本龍馬と紀州藩が談判を行った座敷も残されています。

おすすめは鯛いろは漬けや季節のお惣菜がセットの「いろは御膳」(1595円)。鯛いろは漬けとは、瀬戸内の鯛を酒や昆布に1週間ほど漬け込み、熟成させたもの。アルコール分はすっかり抜けていて、ふくよかな香りと濃厚な旨みが楽しめます。
そのままでも、ワサビ醤油をつけてもおいしいですが、最後は昆布とカツオでとった熱々のダシをかけて、鯛茶漬けとして召し上がれ。
●営業時間:11:00~15:00(14:30LO)
●定休日:火曜(祝日の場合は営業)
●電話番号:084-982-1920
●URL:https://www.tomo-iroha.jp/
【ゆこゆこ限定クーポン】宮崎駿デザインポストカードプレゼント
お会計の際にこちらのクーポン画面を表示、もしくは印刷したものをお渡しください
※2000円以上のお食事をした方に1枚ずつプレゼントとなります
※有効期限:2020年3月31日(火)
※プレゼントは無くなり次第終了
※クーポン1枚につき1回限りご利用可能
※天候等により営業時間・休日は急遽変更となる場合があります
絶景スポット① 医王寺の「太子殿」

弘法大師によって826年に創建されたと伝わる真言宗の古寺。現存する鐘楼は福山藩主・水野勝成の建立といわれています。

後山の中腹に建ち、境内からは鞆港の全景を一望できます。さらに段数が刻まれた石段を踏みしめ、583段目まで上りきると太子殿があり、そこには疲れも吹き飛ぶほどの絶景が待っています。特に空気が澄んでいる冬期は、瀬戸内海の多島美を堪能するのにおすすめ。この山中の小径はオランダ商館の医師・シーボルトも植物観察や昆虫採集のために上ったのだとか。
●営業時間・定休日:境内自由
●電話番号:084-982-3076
●URL:http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/sights-spots/94872.html
絶景スポット② 福禅寺の「対潮楼」

市営渡船のりばから道路を挟んですぐの場所。石垣の上に悠然と建つのは、947年~957年に空也上人によって建立されたと伝わる福禅寺です。

対潮楼(たいちょうろう)は1694年に本堂が改装された際に、朝鮮通信使三役の迎賓館として使われてきた客殿。従事官・李邦彦はここからの眺望を「日東第一形勝」=朝鮮より東で一番美しい景色と褒めたたえたそう。
座って見てみると、ちょうど3つの窓枠が額縁のように景色を縁取ります。正面にお堂が建つのは弁天島、右には皇后島、後ろに見えるのは仙酔島です。
●営業時間:8:00~17:00
●定休日:無休
●料金:拝観料大人200円、中学高校生150円、小学生100円
●電話番号:084-982-2705
●URL:http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/sights-spots/94875.html
鞆の浦観光がより快適になるサービス
ここまで鞆の浦の魅力を伝えてきましたが、最後に鞆の浦をもっと楽しめるサービスを紹介します。
狭い道や坂道もラクラク「グリーンスローモビリティ」

グリーンスローモビリティとは、CO2の排出量が少ない電気自動車型タクシー。2019年4月から全国で初めて、鞆の浦で「グリスロ潮待ちタクシー」の運行が開始されました。
狭い道や坂道が多い鞆の浦では、時速20kmでスイスイ走る小型の車両が観光に大活躍。側面が解放されているので景色がよく見え、風も気持ちいいんです。30分~の貸切だから、行きたいスポットをあちこち回ってもいいし、地元を熟知した運転手さんにおすすめコースを聞いてみても。
●営業時間:9:00~18:00
●定休日:無休
●料金:4人乗り貸切30分2500円(30分ごと延長2500円)
●電話番号:0120-933-662(アサヒタクシー)
鞆の浦を深く知れる「鞆の浦しお待ちガイド」

自分で調べて観光するのも楽しいけど、ガイドさんの案内があれば、迷うことなく行きたいスポットに行け、生の情報も聞くことができます。体験リポートで詳しく紹介しているのでぜひご覧ください。
「鞆の浦しお待ちガイド」の体験リポートはこちら
写真撮影/浦田真行
取材・執筆/伊藤あゆ
「福山・鞆の浦特集」はこちら
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