
京浜急行電鉄自慢の2100形電車で出発!
お出かけのシーズンになりました。今回は、首都圏から手軽に電車の旅を楽しみたい方にオススメの、「お得すぎるきっぷ」の旅をご紹介します。
それは、京浜急行電鉄が販売している「みさきまぐろきっぷ」。三浦半島南端の三崎港は、世界各地でとれたマグロが集まる日本屈指のマグロ漁港で、神奈川県を代表する観光地でもあります。「みさきまぐろきっぷ」は、京浜急行久里浜線の終着・三崎口駅までの往復乗車券と周辺の京急バスの1日乗車券に、マグロ料理の食事券と観光施設やお土産店での利用券がセットになった企画乗車券。このきっぷさえあれば、「赤い電車」としてお馴染みの京急に乗って、1日たっぷり楽しむことができます。
早速、品川駅から出かけましょう。窓口で「みさきまぐろきっぷ」を購入すると、パンフレットとともに「電車&バス乗車券」、「まぐろまんぷく券」、「三浦・三崎おもひで券」の3枚のきっぷを渡されます。価格は、品川駅発の場合で3,500円。品川〜三崎口間の往復運賃が1,860円ですから、プラス1,640円で、路線バスに乗ってマグロ料理と観光も楽しめるというわけです。

昨年10月に、対象となる施設やバスのフリー区間を拡大して大幅リニューアルした「みさきまぐろきっぷ」。京急のウェブサイトからは、各店舗の混雑状況もわかります
まずは京急の赤い電車で、三崎口駅へ直行します。京急には小田急ロマンスカーのような特急列車は走っていませんが、速達タイプの「快特」の一部に、全席クロスシートの2100形電車が使われています。嬉しいことに、特急料金は不要(通勤ライナーの「京急Wing号」を除く)。だいたい、10〜17時台の快特に使われています。土曜・休日は、品川駅8時28分発の三崎口行き快特に2100形が使われることが多く、1日たっぷり楽しむなら狙い目です。少し早めに並べば、運転席後ろの特等席に座れるかもしれません。

京急2100形は、全席クロスシート。運転席の後ろはちょっとした展望席です
いよいよ出発。品川から横浜までは、京急自慢の高速運転区間です。併走するJR東海道本線が、品川〜横浜間を最高時速110キロなのに対し、京急の快特は最高時速120キロ。距離は京急の方が少し長いですが、所要時間はどちらも約17分で、京急がいかにJRと競争しているかがわかります。住宅街を縫うように疾走する京急快特は迫力満点! 特に、京急川崎〜横浜間の生麦駅付近ではJR東海道本線とぴったり併走し、JRの列車を抜き去るシーンを見られることも。京急の激走を体験するなら、座席は進行方向右側がオススメです。

鶴見付近でJRと併走!京浜東北線(右)、鶴見線(上)、貨物列車(左)と遭遇することも。快特は貨物列車を華麗に追い抜いていきます

120キロでの走りっぷりは、京急の大きな魅力のひとつです
横浜駅を出ると、最高速度は110キロとなり、カーブが増えて少し落ち着いた雰囲気になります。旅の気分が出てくるのは、金沢八景駅あたりから。丘陵地帯に入ってトンネルが増え、高層ビルが減って空が広くなってきます。鉄道ファンなら見逃せないのが北久里浜駅の先にある京急ファインテック久里浜事業所。京急グループ最大の車両基地で、車窓の左右にずらりと並んだ車両たちを眺めることができます。

三崎口駅に到着。左の1000形は、発車時に「ファソラシ〜」と音階を奏でる通称ドレミファインバータで有名です。ドレミファインバーターを搭載しているのは、前面に009、017、025、033と書かれた4本のみ。
品川駅から1時間あまり。津久井浜駅を発車すると、左手に海が見えてきました。東京湾の南端に位置する金田湾です。やがて電車は三浦海岸駅を過ぎ、終着・三崎口駅に到着。ホームに降りると、「三崎“マグ”口」と書かれた駅名標がありました。

遊び心いっぱいの、三崎「マグ」ロ駅の駅名標
三崎口駅から、マグロ漁の拠点である三崎港や城ケ島までは5Kmほどあります。ここからは、1日3便運行されている「京急オープントップバス」に乗ってみましょう。昨年10月に登場した2階建てオープンエアの観光バスで、「みさきまぐろきっぷ」の「三浦・三崎おもひで券」を使って乗車できます。おもひで券の使い道は、油壺マリンパークや水中観光船「にじいろさかな号」など様々な施設から選べますが、ほとんどが現金でも利用可能。「京急オープントップバス」だけは、おもひで券でしか利用できません。

けいきゅんの顔が描かれた、可愛い京急オープントップバス。「三浦・三崎おもひで券」は観光施設やお土産店など18の施設から1つを選んで使います
駅前の専用案内所で座席指定券を受け取り、発車10分前になったところでバスに乗車します。赤い車体は、先ほど乗ってきた京急自慢の2100形電車をイメージしたもの。先頭部には、京浜急行のマスコットキャラクター「けいきゅん」が描かれています。
「皆さんこんにちは。本日はようこそ三浦半島へお越しくださいました」
女性ガイドの案内とともに、三崎口駅を出発しました。5分ほどでバス通りを離れ、細い道へ。春のさわやかな風が、オープントップの座席を吹き抜けます。バスの左右にはなだらかな斜面が続き、キャベツ畑が広がります。三浦半島南部は、標高20〜60メートルほどの台地が広がる海岸段丘の地形です。どこか北海道の富良野を思わせる風景で、向こうにはちらりと海も見えます。三浦半島にこんな清々しい景色があるなんて、知りませんでした。

見晴らし満点のオープントップバス。キャベツ畑の向こうに、宮川公園の風力発電所も見えています
美しい丘を抜けると、前方から真っ青な海が近づいてきました。バスは坂を下りて三崎の集落に入り、そのまま城ヶ島大橋へ。三崎港の向こうにうっすらと見える山は、富士山です。

宮川湾の美しい海を見晴らせます。2100形電車をモチーフとしているので、バスなのに京急の路線図が掲示されているのもユニーク
三崎口駅から30分ほど。三浦半島南端に浮かぶ城ヶ島に到着しました。バス停は島の西端、城ヶ島灯台のすぐ下にあります。そろそろお昼なので、ご飯にしましょう。昼食は、もちろん三崎マグロ。「みさきまぐろきっぷ」の「まぐろまんぷく券」を使います。パンフレットによれば、城ヶ島で「まぐろまんぷく券」を使える店は5軒。そのうち3軒が灯台周辺にあります。
土産物店が並ぶ道を歩いて行くと、そのうちの1軒がありました。看板には「本日 朝どれ生しらすあります」の文字。すぐそばに、まるまると太った猫がひっくり返っています。

この日は運良く生しらすがあった「磯料理 かねあ」さん
ピンと来ました。ここに入りましょう。

看板猫のミーコさんに「あのう、これ使えますか」。「まぐろまんぷく券」は、全32軒の中から好きな1軒を選んで使います
そのお店は、磯料理の「かねあ」さん。毎朝漁に出て、朝獲れた新鮮な生しらすを提供している老舗です。「まぐろまんぷく券」と引き換えに注文できるのは、しらす丼をメインに三崎マグロと地魚の3点盛りをつけた「三崎まぐろと湘南しらす地魚セット」か、「お刺身定食(上)」。
お刺身定食(上)を選ぶと、ボリューム満点のお刺身盛り合わせが出てきました。三崎まぐろは赤身・中トロ・中落ちの3点盛り。生しらすと釜揚げしらすもついています。新鮮なサザエもコリコリとした食感が美味しく、大満足のセットでした。普通に注文すると2,160円。早くも「みさきまぐろきっぷ」3,500円の元が取れてしまいました。

ありきたりの観光客向けセットでなく、本気の魚介類がどんっと出てくる「お刺身定食(上)」。平日なら、デザートのソフトクリームもサービスでつきます。
そして、こちらのお店のもう一つの看板が、3匹の猫たち。キジトラのミーコさん、茶トラのドンちゃん、白トラのハナコさんに会うことができます。人なつっこい性格で、お利口なことにお客さんの刺身をねだったりはしません。元々は島に住み着いたノラ猫でしたが、いつしか「かねあ」さんの子になったそうです。

ランチタイムが一段落し、休憩する?ハナコさんとドンちゃん
すっかりお腹いっぱい、猫ともいっぱい触れあって、食後は城ヶ島灯台を散策します。
城ケ崎灯台は、1870(明治3)年に点灯した、日本で5番目の西洋式灯台です。現在の施設は、関東大震災後の1926(大正15)年に建てられた二代目。90年以上にわたり、相模湾を航行する船舶の安全を守っています。

散策路が整備されている城ヶ島灯台。浦賀の観音崎灯台や房総半島の野島崎灯台などとともに、明治初期に設置されました
東京近郊とは思えない、荒々しい岩礁を眺めて歩いて行くと、人工鉱泉「雲母の湯」がある城ヶ島京急ホテルがあります。晴れた日なら、相模湾の向こうに富士山や箱根を望める露天風呂で一浴びしていくのも良いでしょう。

城ヶ島京急ホテル前の風景。磯釣りを楽しむ人も見えます。ゴツゴツとした岩場ですが遊歩道が整備されており安全に散策できます
まだまだ昼過ぎ。午後は、島を散策して東側の城ヶ島公園を歩いたり、バスで三崎港へ戻って、うらり産直センターで美味しい三崎マグロのお土産を買ったりすることもできます。あるいは、路線バスで京急油壺マリンパークへ出て、イルカやアシカのショーを見るのもお勧めです。油壺マリンパークも「三浦・三崎おもひで券」の対象施設。普通に入園料を支払えば1,700円かかるので、おもひで券はここで使うのが最もお得です。

三崎港のうらり産直センター。三崎マグロはもちろん、手軽な干物類も揃います。水中観光船もこの隣から出港します
1日たっぷり楽しんだら、最後はやっぱり天然温泉。三崎口駅から一駅戻った三浦海岸駅の近くには、リゾート施設の「マホロバ・マインズ三浦」があり、地下1,500メートルから湧き出たナトリウム塩化物強食塩泉「三浦マホロバ温泉」に入浴できます。こちらもおもひで券の対象施設なので、温泉派の方はここまで温存しておくのも1つの手です。もちろん、現金で1,000円払って入浴することもできます。帰りはまた京急の赤い電車で。乗車券は途中下車もできるので、横浜に立ち寄ることもできます。
たったの3,500円で、丸1日、楽しみ尽くせないほど楽しめる、京浜急行「みさきまぐろきっぷ」の旅。今度の週末、ぷらっと出かけてみてはいかがですか?

三浦半島唯一の天然温泉、三浦マホロバ温泉。2つある大浴場は男女入れ替え制で、露天風呂は午前が男性、午後は女性となります。
京浜急行電鉄「みさきまぐろきっぷ」
http://www.keikyu.co.jp/information/otoku/otoku_maguro/
(2018年5月10日公開)
文中で紹介された三浦マホロバ温泉の宿情報はこちら