紀伊半島といえば、奈良、三重、和歌山の三県にまたがる日本で一番大きな半島です。温暖な地域で、南紀勝浦温泉、南紀白浜温泉など有名な温泉地のあるエリアでもあります。
この半島の南端が和歌山県で、東側には古座川弧状岩脈と呼ばれる岩脈があります。岩脈とはマグマの通り道で、古座川弧状岩脈は約1500万年から1400万年前に形成されたものといわれています。そしてこの古座川沿い総延長20㎞にわたるエリア中心にして奇岩群を見ることができます。そこで今回は、紀伊半島の奇岩奇峰群が見られる道の駅としても珍しい場所を紹介していきます。

岩でできた川床に穴があき、落差8mの滝が流れる
「瀧之拝太郎」

凸凹になった岩の川床が露出し、水路のように細くなったところを川が流れている姿を見ることができます。非常に珍しい地形景観のため、和歌山県レッドデータブック(*)に選定されています

紀伊半島最南端に近い内陸部にある古座川県立自然公園の中にある道の駅です。駐車場から100mほど歩くと、古座川の支流「小川(こがわ)」があります。このあたりは「滝の拝」と呼ばれる場所で、約1㎞にわたって岩の川床が続きます。川床のくぼみに入った石が川の流れで回転し、長い時間をかけてポットホールという穴を作り、その穴が露出している姿を見ることができます。
さらに落差8mの滝もあって、川床と合わせて迫力のある景観が楽しめます。川にかかる橋から滝の様子がよく見え、川沿いにもビューポイントがあります。
(*)レッドデータブック:環境省や国際自然保護連合(IUCN)が発行する、絶滅のおそれのある野生生物の保全状況や分布などをとりまとめた本。和歌山県では希少な動植物に加え、植物群落や地形・地質についても調査を行い併載

道の駅は滝の拝を見学するための場所といってもいいところ。駅の売店は土日祝日のみ営業しています
瀧之拝太郎所在地 和歌山県東牟婁郡古座川町小川774
アクセス 【車】京阪神方面からは近畿自動車道紀勢線経由、国道42号を南下。名古屋方面からは東名阪自動車道・伊勢自動車道を経て国道42号を南下
【電車】JRきのくに線古座駅から車で約30分。JRきのくに線古座線から町営ふるさとバス小川線で約40分
岸壁に風化した無数の穴が見られる
「虫喰岩」

風化現象によって岩壁一面に蜂の巣のように穴があいています。穴の大きさや形状がそれぞれ違うので、見比べても面白いですね
古座川沿いの古座川弧状岩脈にある虫喰岩は高さ20mほどの岸壁で、一面にタニフォと呼ばれる風化した大小さまざまな穴があいています。直径10㎝、深さ4~5㎝の穴が多いですが、なかには直径1mを超えるものもあります。
道の駅の案内看板には「この岩には、穴のあいた小石に糸を通して願をかけると治るという信仰があります」と説明があり、耳の病気に効くといわれています。道の駅にある虫喰岩は「高池の虫喰岩」と呼ばれ、周辺では「浦神の虫喰岩」、「ボタン岩」など同じように風化し穴のあいた岩を見ることができます。

岸壁全体も風化を受けて奇岩というのにふさわしい不思議な形をしています。虫喰岩の目の前には道の駅の売店がありますが、瀧之拝太郎と同じく土日祝日のみ営業しています。建物の裏手にはパークゴルフ場があります

虫喰岩所在地 和歌山県東牟婁郡古座川町池野山705-1
アクセス 【車】京阪神方面からは近畿自動車道紀勢線経由、国道42号を南下。名古屋方面からは東名阪自動車道・伊勢自動車道を経て国道42号を南下
【電車】JRきのくに線古座駅から車で約10分
海の中を大小40余りの奇岩が直線に並ぶ
「くしもと橋杭岩」

そびえ立っている岩は、1400年前のマグマが冷えて固まった部分です。まわりの泥岩よりも固いため、浸食されても残りました。毎年11月初旬にはライトアップされ幻想的な雰囲気を見せてくれます
いまから1400万年前にマグマが湧き上がって、その場所ごと地表が隆起して固まりました。その後、風雨にさらされて地表部分が崩れ、固いマグマの部分が残り、むき出しになったものが「橋杭岩」です。橋の杭だけが残ったように見えることからその名前が付けられました。
ほぼ一直線に並んでいる橋杭岩は国の天然記念物に指定されています。850mの間に25の岩島があって、道の駅からその風景を眺めることができます。大小40余りの奇岩は海中をほぼ一直線に並んでいて、それぞれ名前が付いています。「和歌山県朝日夕日百選」に選ばれているところでもあり、朝焼けのなかを橋杭岩がシルエットになって浮かび上がる姿を見ることができます。


建物の2階からも橋杭岩を眺めることができます。1階の売店では魚の干物などを購入可能。「くじらコロ」や地元のポンカン100%原液を使ったポンカンソフトが人気
くしもと橋杭岩所在地 和歌山県東牟婁郡串本町鬮野川(くじのかわ)1549-8
アクセス 【車】京阪神方面からは阪和自動車道経由、国道42号を南下。名古屋方面からは東名阪自動車道・伊勢自動車道を経て国道42号を南下、熊野、新宮、那智勝浦を経て串本町へ
【電車】京都、新大阪、天王寺からJRきのくに線にて和歌山、田辺経由で串本駅下車。串本駅から車で約7分(特急約2時間40分)。東京、名古屋方面からは名古屋駅よりJR紀勢線にて松阪、新宮経由で串本駅下車。串本駅から車で約7分(特急約4時間30分)
【飛行機】南紀白浜空港より車で約1時間40分
高さ100mもあるそびえたつ岸壁
「一枚岩」

古座川の一枚岩は国指定の天然記念物です。この大きな岸壁に、守り犬の影が浮かび上がります
道の駅の目の前を古座川が流れ、その向かいには高さ100m、幅500mの一枚岩が鎮座しています。日本最大級の一枚の岩盤といわれるだけあって、その姿に圧倒されます。
この一枚岩には伝説があります。あるとき古座川沿いに岩を食べる魔物があらわれました。一枚岩も魔物に食べられそうになりましたが、猟犬がその魔物を追い払ったおかげで、一枚岩は穴だらけにならず残ったといいます。そして毎年4月19日前後と8月25日前後の数日間、一枚岩が夕日を受けて「守り犬」の影が岸壁に浮かび上がるそうです。

駅内の「一枚岩鹿鳴館」からも一枚岩を眺めることができます。古座川産ブルーベリーとゆず胡椒を使った鹿肉100%のジビエバーガーが人気メニューです
一枚岩所在地 和歌山県東牟婁郡古座川町相瀬290-2
車:京阪神からは南部ICを出て国道42号線を南下。串本町高富から国道371号線で古座川町方面へ約20分
南紀勝浦温泉:温泉が豊富な和歌山県の中でも、170を超える多様な源泉に恵まれた一大温泉地。南紀勝浦温泉と湯川温泉からなり、旅館や公衆浴場など、立ち寄り施設が充実しています。
南紀白浜温泉:湯崎半島の海岸に湧く7つの温泉の総称が「南紀白浜温泉」。1300年以上の歴史を持つ、日本でも有数の古湯として多くの温泉ファンが訪れます。
(2018年5月14日公開)
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