明治時代に大ヒットした小説『金色夜叉』。熱海を舞台としたこの物語は、昭和に入ってからも何度も映像化され、熱海の地を一躍有名にしました。そんな金色夜叉のハイライト、熱海海岸での別れのシーンを再現した銅像が、熱海中心部の海岸付近に設置されています。そのかたわらに立つ立派な大きな松は「お宮の松」と呼ばれ、親しまれています。熱海海岸の「お宮の松」にまつわるエピソードや、知られざる見どころをご紹介します。
東海岸に建つ貫一お宮の別れのシーンを再現した銅像

熱海駅から海に向かって歩くこと約15分。温泉旅館やホテルが立ち並ぶ国道135号線沿いに、日本髪の女性と学ランに身を包んだ男性の銅像が立っています。この像は明治時代の小説『金色夜叉』の代表的なシーンを再現したもので、舘野弘青が制作しました。主人公の間貫一(はざまかんいち)にはお宮という許嫁がいましたが、お宮がダイヤモンドの指輪に目がくらんで富豪の富山唯継に嫁いでしまいます。このことに腹を立てた貫一が、熱海海岸でお宮を問い詰め、復讐を誓うという場面を表したのがこの銅像です。「来年の今月今夜のこの月を、僕の涙で曇らせてみせる」という貫一のセリフが有名ですね。
この物語は完結する前に作者の尾崎紅葉が亡くなってしまったため、弟子の小栗風葉が完結させました。金色夜叉のヒットは、そして物語の舞台になったことで、熱海の名は一躍世間に広まったのです。その後、昭和に入ってからもこの作品は映画化やドラマ化され、今でも幅広く愛されています。
銅像を見守り続ける「お宮の松」

貫一お宮の銅像のすぐ隣には立派な松の木が生えており、「お宮の松」の愛称で親しまれています。この松はもともと「羽衣の松」という名前でした。ですが小栗風葉が松の木のそばに金色夜叉の句碑を立てたことから、いつしか「お宮の松」と呼ばれるようになったそうです。

そんなお宮の松ですが、実は現在の松は二代目なのです。初代の松は現在の国道135号線が通る場所に生えており、その両脇を人馬が行き交っていました。しかし自動車が普及すると、道路の真ん中に生えていたお宮の松は排ガスの影響で枯れてしまいます。その後地元のホテルの寄贈により二代目お宮の松が植えられることになり、1986年には熱海ロータリークラブにより、二代目お宮の松の隣に貫一・お宮の銅像が立てられたのでした。初代の松は現在切り株となって、二代目の松の隣に飾られています。
車道に小さなプレートが残る「初代お宮の松跡」

初代お宮の松が植えられていた場所は現在アスファルトが敷かれ、車道になっています。ですが、松が生えていた場所の路面には「初代のお宮の松跡」と刻印された小さなプレートが埋め込まれていますよ。大きさはタテ15cm・ヨコ25cm。重さ28kg・長さ30センチもの杭を付けて、動かないように路面に固定されています。場所は、二代目お宮の松の横断歩道のそば。銅像を見に来たら、ぜひこのプレートも探してみてください。その際には車にじゅうぶん注意しましょう。
熱海が舞台となった小説『金色夜叉』から生まれた観光スポット「お宮の松」。すぐ目の前は熱海を代表するサンビーチで、記念撮影にも最適なスポットです。夜間はライトアップされているので、散策のついでに立ち寄ってみるのもいいかもしれません。初代お宮の松のプレートは知る人ぞ知る隠れ名所なので、熱海においでの際は探してみはいかがでしょうか。
施設情報
住所 | 静岡県熱海市東海岸町(国道135号下り車線沿い) |
電話番号 | 0557-86-6218(熱海市公園緑地課) |
アクセス | JR熱海駅より徒歩15分/熱海駅より熱海港方面行きバス→お宮の松下車(約5分) |
駐車場 | 隣接市営東駐車場250台(30分100円) |
URL | https://www.ataminews.gr.jp/spot/113/ |