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年6度ある本場所が終わるたびに、地元・熊本県宇土市に帰省するという、現役大相撲力士の正代関。そんな彼の恒例となっている里帰りに、ゆこゆこがお邪魔することに。
今回一緒に訪れたのは、熊本の天草地方。世界遺産にもなった崎津教会や集落、隠れキリシタンの歴史のほか、有明海など蒼い海に囲まれているため、海の幸は絶品! また実は、温泉にも恵まれた土地でもあるんです。15日間の激闘で傷ついた体を癒やすにはうってつけの場所。
九州本土とは天草五橋でつながり、正代関の地元・宇土からもほど近く。そんな懐かしの地で正代関がリフレッシュする、1泊2日の旅、スタートです。
蒼い海に癒やされる「四郎ヶ浜ビーチ」
実家のある宇土市からクルマで約50分。天草上島にある「道の駅有明リップルランド」前の海岸に、巨大なタコのオブジェ(ありあけタコ入道)を発見!

タコの足の中にすっぽりと入って記念撮影をする人も多いそうですが、さすがに正代関の体では入れません。独特な顔をしたオブジェを見上げながら「このあたり、さぞかしおいしいタコがあるんでしょうね」とぼそり。

実際、ここ天草市有明町では、2004年頃から商工会が中心となり、タコによるまちづくりを進めていて、国道324号の有明区間沿いの飲食店では地元で捕れたタコが食べられます。

少し歩いて四郎ヶ浜ビーチへ。「天草の海って、改めて見ると、こんなにきれいなんですね!」と目を輝かせながら、階段を降りていく正代関。
聞けば幼少期は、両親と姉、弟と家族皆で片道2時間ほどかけ、海水浴にいくのが恒例だったそう。美しい海を好む父親が、家族にもきれいな海を見てもらいたいと、少々遠出してでもみんなを連れていったのだとか。

「大学進学で上京してからは、海に行くとしたら湘南。そこと比べると水が透き通っていて、びっくりするくらいきれいです。海を見ると懐かしい気持ちになります。小学生の頃、海で日焼けした翌日は、相撲クラブでの稽古中に焼けた肌が砂と擦れて痛かった……。そんな思い出もよみがえりました」

海の音を聞きながら遠くを見つめていると、「ぐぅー」とふいに大きなお腹の音が。正代関に限らず、基本力士には、朝食を食べる習慣がありません。相撲の稽古はハードなので稽古前に朝食はとらず、昼食がその日の1食目なのです。さぁ、お腹を満たしに行きましょう!
美味グルメが揃う「リゾラテラス天草」

向かったのは四郎ヶ浜ビーチからクルマで約20分の「リゾラテラス天草」。オーシャンビューのレストランや天草限定のお土産、海産物を揃えたお店などが集まったリゾートマーケットです。
お腹がペコペコの一同は、天草の厳選素材を使用したレストラン「プレート カフェ リゾラ」へ入ります。海風が心地よいテラス席へ通してもらいました。

かけつけ一杯、白ワインを嗜む正代関。「贅沢な時間ですね」と気持ち良さよさそうです。
「いっぱい頼まなくては!」という気持ちにかられたゆこゆこスタッフ、とりあえず気になったものを手当たり次第に注文。ピザ・カレー・パスタ・お肉・サラダ・パンケーキ……。

気づけばテーブルに料理がびっしり。辛いものが苦手な正代関、カレーは少々スパイシーだったようで、ここでのお気に入りは「牡蠣とイカ・イカスミのピッツァ」「熊本県産赤牛肉のロコモコ」そして「トロピカルパンケーキ」。

「牡蠣、好きなんですよ。本場所中は食あたりするのを避け、生牡蠣は食べないようにしていますが、小ぶりでぷるんとした牡蠣が好みです。このピザ、本当に美味しい!このお肉もワインと合いますね!」とがぶりっ。

パンケーキは待ちきれず、お皿ごと持って食らいつきます。「全体的にどの料理も味が洗練されているのに、意外とリーズナブルなのもうれしい。次に帰省したときはぜひ家族と一緒に来たいです!」

続いて向かったのはベーカリーショップ「天草塩パンラボ」。
塩パンの焼き上がり時間に合わせて、お客さんが行列を作る人気店です。この日も長蛇の列ができていて、正代関にも一緒に並んでもらいます。地元のファンたちに囲まれながらも、なんとかパンをゲット。

天草塩を使い、熟練の職人が一つ一つ丁寧に焼き上げる塩パンは約9種類。「塩パン プレーン」を食べた正代関は、「1個で満足感がありますね。バター風味のマーガリンが使われていて、こってりしているので食べごたえがあります」とニッコリ。

そして最後に向かったのは、本格的なイタリアンジェラートや氷温熟成されたコーヒーを味わえる「アイランド スタンド」。塩ミルクとストロベリーのダブルをオーダーしました。いろいろな美味グルメを食べ尽くし「リゾラテラス絶対また来ます」と誓った正代関でした。
海のすべてを堪能できる「小松屋渚館」
クルマで移動すること約10分、今回宿泊する「小松屋渚館」に到着です。早速お風呂へGO!

こちらの旅館では、「空香」と「海香」というふたつの浴場が、日替わりで女湯・男湯に代わります。この日は「露天風呂 海宝の湯」が楽しめる空香が男湯に。天草の海を眺めながらのんびり。どこかホッとした表情で、正代関は先の本場所を振り返ってくれました。
「大阪場所(2019年三月場所)で僕、9連敗したんです。精神的にもキツかったですね。体調が良い・悪いに関係なく、体が数cmズレるだけでも、勝ち負けに影響するのが相撲です。僕はうまくいかないとき、悩むよりも祈ることにしていて、験担ぎはしません。その行動を間違えたらどうしよう……と不安になるので(笑)」

昼下がり、まだ穏やかな3月の陽に照らされながら、露天風呂に浸かって海と空を見つめる正代関。大きなその背中からは、土俵上で見せる厳しさが消え去り、静かで温かみに満ちているように見えました……。温泉は闘う男の心をほぐし、和ませる力があるようです。

部屋に戻り、広縁から海景色を見つめる正代関。「落ち着いた印象の部屋なので、ゆったり過ごせそうですね。夕食までちょっとひとりになってもいいですか?」。自身をインドア派と語るだけあって、どうやら一人くつろぎたいご様子。ゆこゆこスタッフも、そっとお部屋をあとにしました……。

ついに夕食の時間です。いただいたのは「柳港会席」。目玉は天草で捕れた新鮮な名物のたこステーキと、ボリュームたっぷりの豪快な鯛の姿造り(4名様~。3名様までは個人盛り)。

たこステーキが大好きだという正代関。「これは絶対、お米と食べたいやつですね」とお茶碗一杯にご飯を盛り付け。ぷりぷりした真ダコの食感と甘口醤油がしっかり染みた味わいに、箸が止まりません。「小鉢の『タイの真子と肝』もおいしい」とペロリとたいらげてしまいました。

お刺身はそのまま食べるだけでなく、鯛茶漬けとしてもいただきたい!ということで、仲居さんにワガママを言って用意していただきました。
鯛をごまだれにつけ、ごはんにのせ、お茶を注ぎ、九州醤油を少々。九州ならではの絶品の味に、舌鼓。気づけばおひつも空に!
やっぱり醤油は九州醤油派の正代関。「東京で暮らし始めてすぐに、『醤油って辛いんだ!?』と驚いたのを覚えています。熊本にいたときは九州特有の甘い醤油に慣れていたので。今もこの醤油を付けるとおいしいなと思いますし、地元に帰ってきたなという気持ちになりますね」
地元で愛される老舗「スナック藍」
地元産の魚介たっぷりの夕食で満たされたあとは、宿からタクシーで5分ほどの「スナック藍」へ。

約30年前にオープンし、現在のママに変わったのは8年ほど前から。地元の常連さんたちでいつも賑わっています。

ママやスタッフと会話するなかで、正代関の出身高校にママの息子が通っている事実も判明。
「僕、(高校の)120周年イベントに来賓として呼ばれたんですよ」「そういえば正代関のこと、あのとき見たような気もするわ」なんて、思いっきり天然なママ。一方の正代関は、ちょっと悲しそう……。

普段はシャンパンやハイボールを好む正代関、やっぱりお酒が強いです。お酒が進むにつれて、皆からカラオケをせがまれて、T-BOLAN『離したくはない』とレミオロメン『3月9日』をよく通る声で、しっとりと歌い上げてくれました。
ちなみに体が大きく、後援会関連やイベントで歌を披露することも多い力士は、歌が上手いことでも知られています。お見事です!

クラブの常連客の方と記念撮影をしたりと、すっかり満喫し、最後にサインもプレゼント。

宿へ戻る途中「締めはやっぱりラーメン」と寄り道。懐かしの味を堪能し、再び満腹になったところで1日目終了です。おやすみなさい!

ユネスコ世界文化遺産の「﨑津集落」

2日目は、天草下島にある天草市河浦町﨑津(以下、﨑津集落)を周遊します。宿からクルマで1時間20分ほどのところにあります。

2018年にユネスコ世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。「﨑津集落」もそのひとつです。

江戸幕府がキリスト教禁教令を出すと、宣教師やキリシタンへの弾圧が厳しくなりましたが、そんな状況下ながらも﨑津に住む人々は信仰を続けました。それが有名な「隠れキリシタン」と呼ばれる人々です。
アワビやタイラギなど、貝殻の内側にある模様を聖母マリアに見立てて祈る風習や、身近なものを信仰の対象に代用したといわれています。

﨑津集落の象徴の一つとも言えるのが、1934年に建てられた重厚なゴシック様式の﨑津教会。畳敷きの内部は国内でもとても珍しいといえます。禁教期には絵踏みが行われていた場所です。残念ながら、教会内は撮影禁止のため、教会の前で記念の1枚。
﨑津名産・杉ようかんを買える「南風屋」

しばらく集落を散策するなかで、﨑津名物ともいえるお土産を発見。220年以上前から作られている(!)という「﨑津 杉ようかん」です。
今回立ち寄った「南風屋(ハイヤ)」は、郷土文化伝承館として、杉ようかんや﨑津いちじくジャムなどを製造・販売しています。

餡をうるち米で包み、ドラゴンフルーツを使って色付けした杉ようかんは、一般的な羊羹のイメージとは異なる甘いお餅です。
「甘さがしっかりあるけど、塩が効いている」と正代関。食感はもちもちしていて、お茶請けにぴったりです。

杉の葉は防腐剤と香り付けの意味があるそう。﨑津伝統のお菓子なのでお土産に買うと喜ばれそう。正代関も家族用にと手にしていました。
天草産地魚を使った極上寿司「海月」

ランチタイムは寿司店「海月(くらげ)」へ。外観内観共にカフェのような、木のぬくもりが優しい印象の海月は2017年3月、この地にリニューアルオープンしました。机や椅子は廃校から譲り受けたものだとか。

「天草産地魚のおまかせ握り」をオーダーすると、一つ一つのネタが、さまざまな味付けがなされた状態で提供されます。醤油を付けずに、そのままいただきます。
口に運ぶ度に、「いやぁ、美味しいっす……」と正代関。見ているこちら側まで、とびきり幸せな気持ちになる笑顔です。

「どれも美味しいのですが、とくに印象的だったのは『桜鯛の白子 醤油炊き』です。家族にも食べさせてあげたいなと思いました」

酸味と苦味が強めな柑橘・橙(だいだい)を絞り、﨑津の海水を汲み上げて作った天日塩をかけたイカ、燻製醤油を付けたカマス、海水をくぐらせただけのウニなど……。
2年間追い足ししながら炊き続けているというあおさ汁も、正代関のお気に入りに。店主に聞くと、九州ではメジャーな麦味噌を使用し、牛乳も少々加えているそう。

天草の魚介を知り尽くし、そのときどきで最も美味しく食べられる方法を考え続ける店主が提供するお寿司は、まさに極上。「今まで食べたお寿司の中でもベスト3に入るくらいでした」と正代関も大満足でお店をあとにしました。
持ち込みも可のほっと安らぐ「下田珈琲」

食後は海月から徒歩5分ほどの「下田珈琲」へ。5年前にオープンした下田珈琲はおしゃれで落ち着ける空間です。

近くにあるケーキ屋「KUROSHIO(くろしお)」で買ったケーキを持ち込むことも可能。スイーツをペロりと食べたあとはお店自慢のコーヒーをいただきます。「苦味はやや強めで、後味はすっきりしていますね」

実はこちらのお店、細い階段から2階にも上ることができ、そこにはマリア像が祀られています。神棚の代わりに棚のなかに隠すように置かれた姿に歴史を感じます。もちろん正代関も、マリア様にお祈りをしたのは言うまでもありません。

最後に訪れたのは、﨑津集落からクルマで25分ほどのところにある、天草西海岸に位置する下田温泉街です。街の中心部にある足湯「下田温泉五足の湯」(利用は無料)に立ち寄ります。

お湯の温度はおよそ42度。最初は「気持ちいい」と言っていた正代関ですが、足を5分ほど浸していたら真っ赤に。30分も浸けていると、全身から汗が吹き出るほど温まるそう。
この下田温泉街は、日本の夕陽百選にも選ばれた天草灘に面しています。夕陽はもちろん、グルメも楽しみたいなら、リゾートホテル望洋閣のオーシャンビューレストラン「HORIZONTE」がおすすめと、地元の方に教えてもらいました。

早速レストランに到着。“旬”を味わおうということで、5月いっぱい提供中のウニ丼をオーダー。「甘くてコクがあって、とろっとしてますね。くさみも全然ない! ウニだけで食べるのも美味しいですが、なじみのある甘い醤油を付けて食べるのと、もっと最高です」。特盛りをあっという間にたいらげてしまいました。

今回の旅はいかがでしたか?
「僕は隠れ家的な宿が好きなので、今回のような静かな宿は自分にぴったり。快適に過ごすことができましたね。さらっとした泉質の温泉が好みなので、その点も満足しています。温泉街を歩くのも好きだから、これからも休みが取れたら、温泉に出かけてリフレッシュしたいですね。ほかの天草の温泉にも行ってみたいな〜」

18歳で故郷を離れた正代関。子供の頃の記憶しかなかった天草で、たくさんの魅力と触れ合い、リラックスできるひとときを過ごせたようでした。
頑張れ正代関、ゆこゆこはこれからも活躍を応援してます!
【撮影協力】
天草ありあけタコ街道 https://www.t-island.jp/p/spot/detail/35
四郎ヶ浜ビーチ https://www.t-island.jp/p/spot/detail/26
リゾラテラス天草 http://www.lisolaterrace.com/
小松屋渚館 https://www.yukoyuko.net/4354
スナック藍 http://kami-amakusa.jp/archives/eat/761
﨑津教会 https://www.t-island.jp/p/spot/detail/86
南風屋 http://haiya.kataranna.com/
海月 https://www.t-island.jp/gourmets/p4577
下田珈琲 https://www.facebook.com/shimodacoffee/
下田温泉五足の湯 https://www.t-island.jp/p/spot/detail/440