はじめに
平均寿命100歳時代到来へ!健康なまま、イキイキと楽しく、どう生き抜いていくかということがメディアで問いただされています。一方で、糖尿病患者は予備軍も含め2,000万人を越え、医療費が拡大しているという現状があります。あと10年もすれば、拡大する医療費を国・自治体が支えきれなくなり、自己負担が増大、健康格差が拡がる時代がやってくるかもしれません。一人ひとりの前向きな未病対策が求められている時代になってきています。
また、健康経営が叫ばれ、ストレスやメタボなどの改善について企業が積極的に取り組む時代がやってきています。既に企業を退いている団塊の世代に聞くと、「寝たきり、認知症になって、こどもたちに迷惑をかけたくない」という意見が多くなってきています。ロコモや認知症予防は最も身近な課題になっているのかもしれなません。
こんな時代に求められてきているのが、リフレッシュ、メタボ・ロコモ予防、脳活性につながるなど、「健康をテーマにした旅」です。未病対策のための健康への気づきを与え、健康増進へとつなげる旅のことです。そうした旅を、地域資源を活用し、健康プログラムを造成し、地域を、そして来訪客を元気にしていこう、受け皿を作って地方創生していこう、なんていうことを実は私はやっています。ここでは、美酒・美食・美湯によりキレイになる旅から、この場所から健康生活を始めるきっかけをつくる旅、さらには生活習慣病からの脱出の旅までの、「健やかなる旅」を紹介していきたいと思います。
潮風と森のささやきに癒される南房総セラピー
東京からクルマで約80分、これからの季節、黄色、赤、白、青、紫と様々な花々で彩られる南房総。その風景に吸い込まれ、転地効果で癒しの時間を実感できるのが魅力。そこで、さらにここちよくなる健康プログラムを提供するのが「(社)南房総健康ラボ」です。温暖な気候、潮風、森に癒され、ココロとカラダにここちよいプログラムがラインナップされています。私はその団体の代表理事を勤めさせていただいているので、この先は多少、手前みそにはなるが…

岡本桟橋から望む富士山の姿にほっとする富士見セラピー
ゆったりとした時間が流れる、南房総の内房にある原岡海岸。約100年前に設置された岡本桟橋が海へとまっすぐ続き、その先には富士山が、美しく威風堂々した姿を見せます。潮騒を聞きながら、裸足で波打ち際を歩く。海の冷たさと砂の温もりを交互に足元から感じます。少し疲れたら、潮風を浴びながら、デッキチェアに横になって、時の過ぎゆくままに。気かつくとふっと眠りについてしまいます。スーっと潮風がカラダの中に吹き込んできます。そして、ヌクっと立ち上がり、南房総セラピーガイドとともにSUP(サップ)に興じます。

SUPにチャレンジ。新しい海上のスポーツ「SUP」。サーフボードより浮力が高く初心者でも安定して乗れる
SUPとは、スタンドアップパドルボードの略。サーフボードに似たボードに立ってのり、パドルを漕いで進む海のスポーツのこと。内房なので、波は穏やか。とはいえ、はじめは立つこともままならないが、練習を重ねていくと、悠々と海上さんぽを楽しむこともできるようになります。そして、夕刻、潮風がとまり、夕陽が富士山の脇に沈んでいく。なんともいえない上質の時間。
ゆっくりと砂浜を裸足で歩くことは、自然に体内に取り入れたエアロゾル(海塩粒子)に含まれるミネラルにより自律神経が整えられ、精神安定効果があるといわれています。呼吸器の改善や皮膚疾患にも良いといわれています。足裏が砂浜で刺激されることで、マッサージ効果も。海水の冷刺激と砂浜の温もりのONとOFFにより代謝アップや疲労軽減にもつながるのです。そして、最近人気の海のアクティビティのSUP体験は、海の上でバランス感覚を必要とするので、体幹を鍛え、しなやかなカラダづくりに役立ちます。激しい運動ではないが、全身を使うので、ダイエット効果も。パドルでゆっくり進む海上さんぽは、拡がる視界にリラックス効果も抜群です。
こだわりの健康食
もちろん、南房総では、健康な食も楽しめます。「南房総健康ラボ」では地産地消にこだわり、3食で1,800kcal程度、塩分、栄養バランスにこだわり、地域の飲食店、宿と連携し健康食を提供しています。


南房総の味まるごと、笑顔ひろがる健やかな食卓。夕食、朝食の一例
海辺の料理宿「政右ヱ門」
ここで是非とも訪ねたいのは、外房千倉町の海辺の料理宿「政右ヱ門」だ。日本で唯一といわれる「料理の神」を祀る「高家神社」で行われる「包丁式」の刀主を務める宿主、堀江洋一氏が和食を振舞ってくれます。ちなみに「庖丁式(ほうちょうしき)」とは、平安時代より宮中や武家に伝わった儀式で、食材に直接手を触れずに食材を切り分け、並べる儀式。現在国内で見ることができるのは、ここ高家神社などわずかで、貴重な儀式です。南房総市観光協会会長も兼ねる堀江氏は、南房総ヘルスツーリズムの活動にも積極的です。和食の基本である五味・五法・五色を大切にし、出汁を活用することで塩味を感じさせる料理技術を使い、南房総産の伊勢えびをはじめ、クジラ、アワビ、海藻、旬の魚、そして食用花など地産地消と旬の食材にこだわり、色彩、品数と豪華に魅せてくれます。
「これで600kcal?!」と感嘆!いかに普段カロリーを摂取しているかがわかります。健康食に関する気づきを与えてくれるのです。もちろん観光では豪華な料理も欠かせない魅力の1つだが、こういった健康的な料理を提供できる、お客様が選択できるということも、これからの旅のおもてなしに求められることだと思います。

宿主の堀江氏の包丁が見事に宙を舞う包丁式
昨年から堀江氏は地域住民や宿泊客らと、早朝、週に3回「お目覚めウォーク」を実施しています。これは、副交感神経を刺激し、体内リズムを整え、脳を活性化。朝をウォーキングからスタートさせると健やかで充実した1日を過ごすことができます。堀江氏は、自らのこのウォーキングによって、3ヶ月で約12Kgのダイエットに成功しています。その堀江氏の健康秘話が「健康にならないと!」という意欲を掻き立ててくれるのです。宿に戻っての朝食は、さらに活力を与えてくれます。前夜に食べた伊勢えびが味噌汁の出汁となって食卓を飾ります。美味しいと実感できることが、なによりも健康な証拠、幸せな時間…

千倉サンライズウォーク!パワー充電、元気みなぎる瞬間!
健康プログラムを楽しむ
朝食をとったあと、午前中の健康プログラムに出かけよう。アクティビティは様々に選択することができます。近くの能蔵院というお寺では修験道の格好をした住職とともに、「さーんげ、さんげ(懺悔懺悔)、ろっこんしょうじょう(六根清浄)」と掛け念仏を唱えながら、裏山を登るミニ修験道体験をはじめ、写経・写仏などの体験を通して、精神を集中する、リラックス効果を高めるといったこともできます。

能蔵院にてココロの浄化、ミニ修験道体験へ
また、もう一度、内房へ戻り、森林セラピー基地として認定もされている「大房岬自然公園」で森林ウォーク&森林浴を楽しむのもよいです。人気なのが森の中でのハンモック体験。森の木々の広がりを見上げながら、ゆったりとした空気の流れの中でかすかに揺れて過ごす何も考えない時間は至極の時間となります。芝生の上では潮風を浴びながらのヨガも楽しむことができます。さらには、長い海岸線をロードバイクやクロスバイクをレンタルして、潮風を浴びながら走る、南房総タラソテラピーライドもガイドとともに楽しむことができます。

森の中でゆったりと流れる時間を楽しむハンモック

潮風を浴びながら、海岸線をサイクリング
南房総では、南房総の海、里山、食材といった地域の健康につながる資源をちょっと上手に使うことで、地域と地域住民、そして訪れる人、すべてを元気にしていくという取り組みに積極的です。すぐそこで、健康生活へスイッチを入れることのできる場所、それが南房総の魅力なのです。
もちろん、南房総エリアには千倉、白浜、内房には岩井などの温泉郷があり、温泉宿や日帰り温泉なども充実しています。やっぱり、健康になる旅のしめくくりも、温泉につかって仕上げとしたいところだ。
(社)南房総健康ラボ所在地 千葉県南房総市富浦町青木123番地1(道の駅とみうら内)
海辺の料理宿 政右ヱ門(まさえもん)所在地 千葉県南房総市千倉町忽戸497
高家神社所在地 千葉県南房総市南朝井南朝夷62
アクセス JR内房線「千倉駅」よりバスで3分「高家神社前」
青龍山 能蔵院所在地 千葉県安房郡千倉町忽戸146
電話番号 0470-44-0588
(2018年2月20日掲載)
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