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【お祭り】夜空に舞う松明の火の粉!東大寺のお水取りへ

【お祭り】夜空に舞う松明の火の粉!東大寺のお水取りへ

奈良・東大寺のお水取りは、早春の風物詩としてよく知られています。TVのニュースなどで流れているお水取りを実際に目の前で見てみたいという人は多く、お水取りの見学に合わせたツアーも数多く開催されているほど。でも、その意味は意外と知られていません。今回はその内容と見どころについて、ご紹介しましょう。

古都に春を告げる、水と火の儀式

登廊を登っていく松明。練行衆(修二会の法会を行う僧侶)を先導する灯りだ。持ち運ぶのは童子と呼ばれる、法会の補佐をする僧

昼松明が進む登廊は、通常は観光客も通れる二月堂への参道となっている

振り回される松明から火がほとばしり、舞台下の参詣客にふりかかる

3月12日、19時半、早春の夜はもう深い闇の中。鐘の音が響き、階段を松明(たいまつ)が上り始めると、それまでのざわめきが一瞬静まります。見上げる二月堂に松明が登り切ると、僧侶の履いた木沓の音が響くとともに、舞台から突き出された松明が舞台を走りきり、大きく振られて夜空から観客の集まるもとへも降りかかり、ざわめきは大きな歓声へ──。「お水取り」のクライマックスです。

奈良の人々に限らず、お水取りの話題は日本人にとって梅の知らせと同じほどに春を感じさせてくれるものでしょう。その始まりは天平時代、東大寺を開山した良弁上人の弟子、実忠和尚が創始したもの。それ以来、戦乱の世でも一度も途絶えることなく続き、今年でなんと1,267回目を迎えます。

お水取りというのは、2月中旬から前行が、そして3月から本行が始まる、東大寺二月堂の「修二会」の別名。名前の通り、かつては旧暦2月1日から15日まで行われた法要で、正式には十一面悔過法といいます。二月堂の本尊である十一面観音の前に、選ばれた11人の僧侶がさまざまな過ちを懺悔し、鎮護国家、五穀豊穣などを願う行事です。半月にわたり参籠し続ける、多岐にわたる儀式の中には神道も取り入れられています。

本当のお水取りが行われるのは12日の深夜

斜面に建てられた懸崖造りの二月堂。その名前からもわかるように、お水取りの行事のために作られたものだ

二月堂の下にある閼伽井屋(あかいや)。若狭井はこの建物の中

狭い意味での「お水取り」は、12日の深夜(13日の未明)に行われるもの。二月堂下の若狭井から本尊にお供えする香水を汲み上げる儀式です。これは、創始者である実忠和尚が全国の神々を集めたとき、若狭の国の神様が魚を獲っていて遅れてしまったことから、そのお詫びとして毎年献上しているものとされています。雅楽が演奏される中、石段を下りて進む行列を参観することはできますが、若狭井自体は建物の中にあるため、実際に汲んでいる様子を見ることはできません。ちなみに若狭国、現在の福井県小浜市にある若狭神宮寺では、お水取りに使われる水を送るための「お水送り」が毎年3月2日に行われています。

お水取りのあとも修二会の本行は続き、翌14日に満行。夜の二月堂は再び静けさを取り戻し、大和路に春がやってきます。

お松明は一日だけでなく14日間行われます

松明は童子の手により回転しながら舞台を駆け抜け、南側で振り回される。参詣客と最も近づく瞬間

お水取りのシンボルとも言える「お松明」は、もともと僧侶が行を始めるときに先導する灯りとして焚かれたもの。それがのちの時代に大きくなり、法要の見せ場にまでなりました。狭い登廊の階段を火の粉をまき散らしながら登る姿は、見ていても心配になりますが、実際に過去には建物に火が燃え移ったこともあったとか。

お松明自体は修二会の本行が続く3月1日から14日まで行われていますが、お水取りのある12日夜が11本、他の日は10本。また、12日だけは長さ8m、重さ約70kgもある巨大な籠松明が使われるため、時間も長く見応えもひとしおとなります。もっとも、人出も12日に集中し、2万人から3万人となって通行規制も行われるため、ゆっくり味わうなら別の日を選んで拝観してもいいでしょう。

お松明の火の粉を浴び、燃えがらを持ち帰れば一年間健康になると言われています。

寒さと火の粉対策は忘れずに

人出の多さで熱気があるとは言え、3月中旬の奈良の夜は冷え込みます。立ったまま長時間待つことを考えると、厚着をして携帯カイロを用意するなどの防寒対策は忘れずに。また、火の粉を浴びるのはいいけれど、そのために福に穴が空いたりしたら大変。表地の薄いダウンジャケットなどは避けて、燃えにくい素材の上着を用意しましょう。このほか、やはり厳粛な法要ですから、カメラのフラッシュを焚いたり、大声を上げたりするのは厳禁です。

お水取りのあとの二月堂の夜もおすすめです

生駒山に夕陽が沈む二月堂舞台からの夕景。正面に見える大きな屋根が大仏殿

お水取りが終われば、東大寺の夜は静けさを取り戻します。でも、それはまた違った魅力。二月堂までの境内は、24時間自由に参詣できるのです。懐中電灯を用意して出かけましょう。街灯りから離れて南大門をくぐれば、ムササビの鳴き声が聞こえ、運が良ければ飛ぶ姿も見られます。石段を登っていけば、古木の根もとに休むシカの群れに出会ってどきりとすることも。そして、二月堂の舞台まで上がれば、目の前には奈良の夜景と、大きな大仏殿のシルエット。明るいうちに登ってとう夕暮れを楽しむのもいいでしょう。

東大寺お水取り

開催日時 3月1日〜11日、13日19:00開始、約20分間

3月12日19:30開始、約45分間

3月14日18:30開始、約10分間

交通アクセス

近鉄奈良駅、またはJR奈良駅より市内循環バス利用、大仏殿・春日大社前下車、南大門を経由して二月堂まで徒歩約10分。

ただしお水取りの時は混雑するので時間に余裕を持って。

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(2018年3月10日公開)

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上田 泰久
長年、旅行雑誌を中心にライター活動を続けています。ホタルや星がキレイに見える場所についての知識はかなり自信があります。