
カキは海外でも生で食される数少ない海産物
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生食以外にもカキフライなど美味しい食べ方がいろいろあるのもカキの魅力
海の幸・山の幸が豊富な北東北・三陸。春の兆しが見え始めた頃、ここではカキが旬を迎えます。冬の食材という印象のあるカキですが、春にはまた格別の存在。春を訪ねる旅を盛り上げてくれる、新しい三陸の魅力を紹介しましょう。
三陸は日本有数のカキの養殖地

海中につり下げられて育てられるカキ。これは仙台うみの杜水族館での展示
「海のミルク」カキは古代から人々に親しまれていた食材です。海外では古代ローマ時代から利用され、日本でも縄文時代の貝塚からは大量のカキ殻が出土しています。栄養価の面からも、エネルギーになるグリコーゲンやタンパク質、カルシウムに加え、ミネラル類を豊富に含んでいながら、カロリーは抑えめ。貴重な食品といえるでしょう。
カキは日本全国の沿岸に分布していますが、現在市場に出回っているのもほとんど養殖品。沿岸の岩にくっついているものより、栄養豊富な海流のある場所を選んで育てられる養殖カキの方が大きく育つのです。産地としてよく知られているのは広島ですが、それに続くのが宮城県。特に生食用カキでは日本一!お隣の岩手県と合わせ、三陸は日本有数のカキ養殖エリアとなっています。

宮古湾産カキが水揚げされる堀内漁港。カキ処理施設や産直施設の「うみのミルク」がある
味を支える海と山の豊かさ
三陸のカキが美味しい理由は、まずなんと言っても養殖されている海域の水質の良さ。大都市から離れているために生活排水の影響がないことはもちろんですが、ここ三陸沖は親潮と黒潮がぶつかりあい、カキの食料ともなる大量のプランクトンが発生する世界有数の好漁場として知られています。そして山が迫る急深なリアス式海岸は潮通しがいい上に、北上山地から続く豊かな森からは、カキを育てる栄養分が流れ込んできます。特に春先は雪解け水が供給されるのがこの地域ならでは。
そう、カキの旬は冬と思いがちですが、三陸のカキは3月から5月が一番美味しい時期。初夏から夏にかけての産卵期に備え、カキは大きく育ち、その身に栄養を貯め込んでいるからです。
生産者の努力が人気のブランドを生む

写真はイメージ

こちらは花見かきの養殖風景。12月に一度収穫され、付着物を取り除いたあとに籠に入れて4ヶ月ほど再び海中へ、これによってより栄養分を取り込んで身が太っていく
もちろん、自然環境に恵まれているだけでなく、養殖する人々の努力と技がその品質を引き上げていることも見逃せません。宮城県が開発したはえ縄式養殖法、2年から3年かけてじっくり育てる養殖期間の夏場に、数十秒温水につけることによって殻に付着するほかの貝や海藻などを取り除く温湯処理などは、三陸ならではの技術です。また、収穫の際には一度水揚げして殻を掃除したあとに、もう一度2〜3週間ほど網に入れて海中に戻すことで、身を太らせる工夫も行われています。このほか生食用の場合は出荷前に滅菌された海水に漬けて浄化するなど、安全性への配慮も欠かせません。
三陸のカキ養殖は、2011年の東日本大震災で養殖いかだや船の流失、加工施設の壊滅など、大きな被害を受けて復旧が進められています。生産再開には、国内の支援だけでなく、かつてフランスのカキが病虫害で打撃を受けたときに日本がカキの稚貝を提供したお礼にと、フランスのカキ養殖業者からの支援も大きかったそうです。現在でも全体の生産量では震災前の生産量に届いていませんが、ブランドの確立、生産者(1次産業)が加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)にも取り組む「6次産業化」など、新しい試みも進められています。

写真はイメージ
寒さのきびしい東北地方だからこそ、春を迎える歓びは大きいもの。この春、東北へ。旬のカキのとれたてが待っています。
生だけじゃない、焼いたり蒸したり、食べ方はいろいろ


最近流行のオイスターバーなどでは、生牡蠣が主流のように思われていますが、カキの調理方法はいろいろ。焼きガキや鍋、さらにはくん製など、さまざまに利用されています。お手軽なものでは、「番屋風蒸しがき」。これは蒸し器で15分蒸すだけ。電子レンジならラップで二重に包み、殻の深い方を下にして1個ずつ3分(500Wの場合)加熱すればOK。旨みが逃げず、なにもかけなくても美味しいはず。
ちなみに、「Rのつかない月は(May、June、July、Augst)はカキを食べるな」という言葉があります。これは、マガキは5月下旬から卵を持ち始め、7月頃に産卵するため、身がやせてしまうこと、また温度管理が難しかった時代は中毒の可能性があったからですが、冷蔵や輸送技術の上がった現代ではそれほど問題ではなくなっています。
また、生食用のカキと加熱用のカキの違いは鮮度ではないことも知っておきましょう。食中毒を防ぐため、法律によって、生食用のカキは時期や海域が指定されていたり、水揚げ後に無菌化された海水に数日置かれる処理がされたものになります。ただこの処理の期間、カキは栄養を取れないために身がやせてしまうのも事実。生食にこだわらないなら、加熱用カキのほうが美味しいということもあるのです。
「カキの豆知識」カキは海をきれいにする貝
カキの仲間は数多くの種類がありますが、日本で一般的に食用にされているのは冬から春が旬とされるマガキ。このほかに夏が旬になるイワガキも人気が上昇しています。
カキの殻はゴツゴツしていて形は一定ではありません。これは、左殻で磯の岩などに固着生活をしているため、くっつく場所や向きによって変わるからです。殻付きカキを見て、分厚く凹みがあるのが左殻、フタのようになっているのが右殻です。移動することはなく、まわりの海水を大量に漉しとって、そこに含まれる小さな藻類をはじめとするプランクトンを栄養分として育っています。1個のカキが1時間に25〜35リットルもの海水を濾過するといい、カキは海水の清浄化にも大きく役立っているわけです。
ちなみに移動しないため、殻を開閉するための貝柱以外の筋肉はほとんどありません。カキがほかの貝にくらべて歯触りが柔らかいのは、アサリやハマグリのような「足」がなく、食べる部分のほとんどが内臓だからです。
みなさんも三陸の春のカキにぜひ挑戦してみはいかがでしょう!

▲手間と時間をかけて育てられた「花見かき」
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写真・取材協力
「春のたより花見かき」(岩手県宮古市)
栄養豊かな宮古湾で育てられ、4月・5月のみ、市内の飲食店や宿泊施設向けに出荷。厳選生産で通常の3倍の大粒サイズ。
「宮古観光文化交流協会」
http://kankou385.sakura.ne.jp/kaki/
「宮古うみのミルク」
http://uminomiruku.seesaa.net/
「宮古湾の藻場・干潟を考える会」