こんにちは、ダムマニア&ダムライターの宮島咲です。
国内には約2,700基ものダムがありますが、なぜこんなに多く存在するのでしょうか?よくありそうな話で「建設業者を儲けさせるため」などと言いますが、正解は全く違います。水が必要だから、そして、洪水から人々を守るためにこれだけ多くのダムが存在しているのです。
古来のダムの役割は「かんがい用水」
愛知県犬山市に、入鹿池という溜め池があります。地元の人もなかなか気が付いていない様ですが、この溜め池は立派なダムなのです。

入鹿池ダム(愛知県犬山市)。なだらかな斜面がダム本体
堤高(高さ)25.7m、堤頂長(長さ)724.1mというサイズのアースダム(土を盛って造ったダム)で、ダムの定義である堤高15mを大きく上回っています。
このダムは今から約385年前の1633年に造られました。当時、この地方は水争いが絶えることがなく、農作物を育てるためのかんがい用水が不足していました。この状況を打破するため、尾張藩主「徳川義直」によって建設がすすめられました。
溜め池建設にあたり集落が池の中に沈んでしまいましたが、それらの集落にあった歴史的建造物は移転され、現在でも保護されています。昔も今も、水没移転者への保護は手厚かったことがうかがえます。
入鹿池ダムは田畑で使用する水を供給する、かんがい用水専用ダムです。昔は約1,300haの水田に水を供給していましたが、現在は水田の減少により半分以下になってしまっているとのことです。
ちなみに、専門的には、かんがい用水のことを「A」と表現します。Agricultureの「A」ですね。
ダムは電気をつくります
お米がたくさん取れ食べる物に満足してゆくと、人々はより良い暮らしを求めるようになります。そのために必要なものが電気です。ダムに貯まった水を、管を通して上から落下させ、下に設置してある水車を回転させることによって電気が生まれます。

大井ダム(岐阜県恵那市・中津川市)
岐阜県恵那市にある大井ダムは、日本初の発電専用ダムと言われています。堤高53.4m、堤頂長27.5mの重力式コンクリートダムで、関西電力が所有しています。
(重力式コンクリートダムについては第2回連載を読んでおさらいをしましょう)
https://www.yukoyuko.net/yukotabi/archive/v00025
このダムの建設に、1万円札で有名な「福沢諭吉」の養子である「福沢桃助」が携わっており、彼は「日本の電力王」とも呼ばれています。
大井ダムで発電された電気は関西圏内に供給されています。今から約94年前の1924年に完成したダムですが、今でも現役で電気を作り続けています。ちなみにこの大井ダムのおかげで生まれた景勝地が恵那峡です。

大井ダムとともに生まれた恵那峡には遊覧船や遊園地などもあり観光地としても有名です
ちなみに、専門的には、発電用水のことを「P」と表現します。Hydro Powerの「P」ですね。なぜ「H」でないのかは不明です。
飲み水はどこから来るの?
人口が多くなるにつれ、今まで地下水などでまかなってきた飲み水だけでは足りなくなってきました。ダムを造り、水を貯め、その水を飲み水に利用することになりました。

牧尾ダム(長野県木曽町・大滝村)
長野県木曽町にある牧尾ダムは、愛知県内に水を供給している愛知用水の水瓶です。堤高105m、堤頂長264mのロックフィルダムで、1961年に完成しました。
(ロックフィルダムについても第2回連載を読んでおさらいをしましょう)
https://www.yukoyuko.net/yukotabi/archive/v00025
長野県にあるダムが愛知県の方々の飲み水を確保しているって、ちょっと面白いですよね。ちなみにこのダムの水は、知多半島の突先にまで供給されています。
また、専門的には上水道用水のことを「W」と表現します。Waterの「W」ですね。
洪水から人々を守る
ダムによって水田が開拓され、食べ物に困ることがなくなり、電気という便利なものを手に入れると、ますます人口は増えてきます。昔は川が溢れることを恐れ、川沿いなど氾濫の危険性のある場所には人は住まなかったのですが、人の増加と共にその様な場所にも人が住み始めました。
このままでは、これらの地に住む人々の生命が危険にさらされてしまいます。ということで、これを防ぐために造られたのが洪水調節機能を持ったダムです。

小里川ダム(岐阜県恵那市・瑞浪市)
岐阜県にある小里川ダムは、国土交通省が所有する重力式コンクリートダムです。主に洪水調節をおこない、その他、河川流量の維持や、発電などもおこなっています。ダムの大きさは、堤高114m、堤頂長331.3m。1982年から造り始め、2004年に完成しました。
4本の丸柱のデザインと、堤体(ダム本体)の中腹にバルコニーがある大変変わった造りが特徴のダムです。

小里川ダムのバルコニー
洪水調節をおこなうダムは普段はあまり水を貯めず、貯水池はほぼ空っぽの状態です。大雨が降った時に初めて水を貯めはじめ、下流に流す水量を、できるだけ安全な量に減らして放流します。

ほとんど水が貯まっていない小里川ダム。これが通常
まれに、「ダムが放流したから洪水がおこった」などの報道がありますが、ダムは大雨が降ったとき、ダムに流れ込んでくる水量(流入量)よりも、ダムから放流する量(放流量)の方を少なくする運用をしています。
逆に言えば、もしダムが無かったら、ダムがあった場合以上の洪水がおこってしまうということですね。
ただし、大雨の水を貯め込んだダムが満杯になってしまった場合はお手上げです。この場合、流入量と放流量を同じにし、ダムが無かった場合と同じ条件で運用されます。これではダムの意味が無いと思われますが、洪水の発生を遅らせることができました。遅らせたことにより、危険地域に住む方々は余裕を持って避難できます。
ちなみに、洪水調節のことは「F」と表現されます。Flood Controlの「F」ですね。
そのほかの役割
上記でご紹介させていただいたダムの役割のほか、「工業用水」や「消雪用水」の確保を目的とするダムもあります。工業用水は工場などで使用する水のことで、Industryの「I」であらわします。また、消雪用水は雪を流す水のことで、Snowの「S」であらわします。
今回は愛知県犬山市のダムから長野県木曽町にあるダムまで、非常に広域な紹介となってしまいました。その距離約120kmですが、ドライブにはちょうど良い距離ではないでしょうか。これらのダムを訪問するには国道19号線を走ることとなると思います。
国道19号線沿いには、今回ご紹介できなかったダムや温泉宿場が多く点在するので、宿泊しながらダムめぐりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
国道19号線沿いのダム巡りのご参考に

犬山、中津川、南木曽、木曽などの宿情報はこちら
(2018年4月6日公開)