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【連載】ご当地グルメ、忘れえぬ味 「第4回 静岡・梅ヶ島温泉のヤマメの卵の醤油漬け」

【連載】ご当地グルメ、忘れえぬ味 「第4回 静岡・梅ヶ島温泉のヤマメの卵の醤油漬け」

山奥で出会った黄金色の宝石

昨年の秋、静岡市のプレスツアーで「梅ヶ島温泉郷」というところに行って来ました。

梅ヶ島温泉郷とは、静岡市の北部、南アルプスの麓にある「梅ヶ島温泉」「金山温泉」「新田温泉」「コンヤ温泉」の4つの温泉の総称で、総面積は90平方キロメートル、2,000メートル級の山々に囲まれた山間の温泉地です。静岡の「奥座敷」とも言われています。

山の温泉というと、気になるのは食事ですよね。

多いのは山菜やイノシシ鍋、鮎やイワナなどの川魚料理も定番です。梅ヶ島温泉では、 豊富に湧き出る南アルプスの伏流水を使いヤマメを養殖しており、それを使った料理が名物になっています。

しかしヤマメ料理といえば、塩焼きぐらいしか思い浮かびません。他にどんな料理があるのでしょうか……。

JR静岡駅から車で市の市街地を抜け、安倍川沿いに山道を進むこと1時間弱。到着したのは、梅ヶ島温泉郷の一つ金山温泉近くの「魚魚(とと)の里」です。

ヤマメを「釣る」「触る」「食べる」がテーマの体験施設「魚魚の里」

体験施設「魚魚の里」

ヤマメを「釣る」「触る」「食べる」がテーマの体験施設で、ヤマメの養殖もこちらで行っています。

まずは「釣る」から体験。1人1回2,000円で釣竿と餌を貸してもらい、施設中央の大きな池で放し飼いのヤマメを4匹まで釣ることができます。まあ、こういう観光釣り場はよくあるわけで、しかも天然の渓流を使ったものではなく人工池。 勝負はあった、と思っていたのですが……。

これが釣れない。

同行した他のメディアのライターさんや撮影モデルさんは入れ食い状態なのに、何故か私の糸にだけ一向に食いつ来ません。ヤマメちゃん、どうして目の前にエサがあるのに、全く見向きもしてくれないの? 同じ竿と餌なのに、不思議です。

目の前にエサがあるのに見向きもしないヤマメちゃん

目の前にいるのに!

施設の人も「あれ、おかしいな」と困り顔。ビミョ〜な空気が流れ始めました。他の人はとっくに釣り終え、次の体験(触れる)に行ってしまったのに、僕だけ一人池に糸を垂れて居残り状態。

もはやタイムリミットという時、ようやく1匹ゲット!さすがのヤマメちゃんも、同情してくれたんでしょう。

ようやくゲットしたヤマメ

ようやくゲット!

釣ったヤマメは自分でさばきます。これが2つ目の「触る」体験です。

流し台に持っていくと、渡されたのはハサミ。そう、これで腹を切り裂き、ハラワタを引きずり出して洗えというわけです。う〜〜。でも命をいただくとは、こういうことですからね。頑張ってキレイにしましたよ。

ヤマメの内臓をとる”腹だし”

ハサミでお腹を……(写真は撮影モデルさん)

ちなみにこの内臓をとる”腹だし”は1匹50円で係の人がやってくれるそうです(早く言ってよ!)さて、串を刺したら塩をふったら、あとは焼きあがるのを待つだけ(塩焼き代は100円)。

串を刺したら塩をまぶす

ちょっと多めに振るのがコツ

炭火でこんがり焼かれるヤマメ

炭火でこんがりと……

その間に、敷地内の「魚魚亭」でランチです。こちらはヤマメ料理を食べさせてくれる食事処。民芸調のとても雰囲気のいい店内の装いです。

取材時は「蒲焼御膳」を用意していただきました。価格は1人前1,500円ということですが、かなりバラエティー豊かな内容、そしてボリュームです。

「魚魚亭」のランチ「蒲焼御膳」

「蒲焼御膳」1人前1,500円

御膳の品目を挙げてみると──

・ヤマメの蒲焼き丼(ご飯との間に敷かれているのはワサビの葉の天ぷら)

・ヤマメの南蛮漬け(これが酢の加減が絶妙!)

・地元野菜の天ぷら(ワサビの葉、しいたけ、さといも)

・刺身こんにゃく(これも地元のこんにゃく芋)

・クレソンとニンジンのサラダ(クレソンもニンジンも地元産)

・けんちん汁(ヤマメのだしで味付け)

・敷地内の梅のシロップのゼリー&静岡市瀬名地区産のキウイ(レインボーレッドという品種)

そして忘れられないのは「ヤマメの卵の醤油漬け」です。

ヤマメの卵の醤油漬け

まさに宝石!

透き通った黄金色の粒は、まるで宝石!そして全く生臭くなく、プチプチした食感はクセになりそう。これはまさに珍味でしたね。

ちなみにヤマメはサケの仲間ですが、卵がイクラのように赤くないのは、渓流だけで育つため、サケのように海でカニやエビの赤い色素を取り込むことがないから。サケ科の魚の卵は本来このような黄金色なのだそうです。

さらには、単品でヤマメの唐揚げ、ヤマメの竜田揚げ、ヤマメの佃煮も出してもらいました。

単品でヤマメの唐揚げ、ヤマメの竜田揚げ、ヤマメの佃煮も

ヤマメ料理の数々

こんなにも調理法のバラエティーがあるとは正直驚きでしたね。ヤマメ料理のイメージが変わりました。

そして、自分で釣って、さばいて、焼いてもらった塩焼きも登場!これも当然ですが、釣りたて、さばきたて、焼きたてので美味しい!

自分で釣って、さばいて、焼いてもらったヤマメの塩焼き

真打ち登場!

ヤマメというと、痩せていて味もあまりないイメージでしたが、こちらのヤマメは、敷地内で南アルプスの伏流水をたっぷり使い1年半かけじっくり養殖しているので、身が厚いんですね。

南アルプスの伏流水をたっぷり使い1年半じっくり養殖

養殖用の池

孵化する前の卵

孵化する前の卵

だから食べごたえ十分。川魚独特のクセもなくとても食べやすかったです。これで「釣る」「触る」「食べる」、3つの体験をコンプリート!

「魚魚の里」

所在地  静岡県静岡市葵区梅ヶ島5036番地

電話   054-269-2380

営業時間 10:00~16:00 ※7月・8月・9月は~17:00

定休日  月曜日※祝日の場合は翌火

※山間地のため、荒天時には急遽休業の場合あり

ホームページ

いつか入りたい源泉の洞窟風呂

さて宿は、安倍川の最上流・標高1,000メートルの山中にある「おもいでの宿 湯の島館」。1日6組限定の隠れ宿です。

安倍川の最上流にある「おもいでの宿 湯の島館」

1日6組限定の隠れ宿

安倍川が目の前にあり、せせらぎが耳に心地よく響きます。

安倍川沿いのひなびた「梅ヶ島温泉」

川沿いのひなびた温泉地

梅ヶ島温泉郷の中の「梅ヶ島温泉」に属する温泉宿です。宿の自慢はお風呂。

梅ヶ島温泉がかつて武田信玄の隠し湯だったことから、「風・林・火・山」4つの異なった湯船が、全て貸切で楽しめるのです。

「風」は五右衛門風呂と浴室に敷いた畳が特徴。

五右衛門風呂と浴室に敷いた畳が特徴

畳敷きの「風」

「林」は檜のお風呂で、檜特有の清々しい香りがしました。朝は陽が差し込み、本当に林にいるような清々しさ。

檜のお風呂

檜風呂の「林」

「火」は、湯上り処に囲炉裏を配したユニークなお風呂。もちろん、この囲炉裏で煮炊きはできませんけどね。

湯上り処に囲炉裏を配したユニークなお風呂

囲炉裏がある「火」

そして「山」は、この宿の創業(1958年)当時からある岩風呂。

宿の創業(1958年)当時からある岩風呂

伝統の岩風呂

最初はこの風呂しかなく、他の「風林火」は、宴会場などを壊して新しく作ったのだそう。

旅館内で湯めぐりができ、しかも全て貸切りというのは中々無いですよね。我が家には小さい子供がいるので、こういう貸切風呂があるのは助かります。

ちなみに、泉質は「単純硫黄泉」。ほんのりと硫化水素の香りがし、湯は滑らかなので湯疲れしません。硫黄泉は肌にもよく、いわゆる美人の湯として知られていますから、女性にも喜ばれるでしょう。

そして、すべて源泉かけ流しです。ちなみにこの宿の近くには梅ヶ島温泉の源泉があり、そこから旅館や民宿など梅ヶ島温泉に11軒ある温泉施設に供給されているそう。

そこに朝、散歩がてら行ってみました。

川のそばの小高い丘の階段を上っていくと、「岩風呂」と称される場所がありました。実はここが源泉。なんと洞窟なのです。本来は中を見ることができませんが、今回特別に鍵を開けて見せていただけることになりました。

梅ヶ島温泉の源泉、洞窟風呂

これが源泉の洞窟風呂!

なるほど、確かに洞窟の中には湯が溜まっており、天井からはポタポタと温泉の雫が滴り落ちてきます。

そして、温泉の蒸気が充満していてサウナのよう。

昔は直接入ることもできたそうですが、諸事情により昭和43年からこの洞窟での入浴は禁止となりました。

天井からはポタポタと温泉の雫が滴り落ちる

温泉が天井からぽたりぽたりと……

いや〜、ここに直接入浴できたら、最高に気持ちイイでしょうね!

いつか体験したいものです。

「おもいでの宿 湯の島館」

所在地 静岡県静岡市葵区梅ヶ島5258-7

電話  054-269-2032

ホームページ

※本文中の情報はすべて取材時のものです。最新情報は施設の公式サイト等でご確認下さい。

(2018年5月2日公開)

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いからし ひろき
東京在住のライター・構成作家。食・酒・旅を主なテーマに、「日刊ゲンダイ」「おとなの週末」などの雑誌、テレビ、ウェブで活躍中。日本旅のペンクラブ理事。 (プロフィール写真:kurekaoru)