
古代ギリシャの神殿を思わせる「いしかり」の3層吹き抜けエントランス
目次
日本は四方を海に囲まれた島国。フェリー航路も、全国各地に張りめぐらされています。
ですが、間違いだらけのイメージをここまでたくさん持たれている移動手段も他に知りません。たとえば、「長時間の移動で退屈」「レストランの食事がおいしくない」「乗客はだだっ広い和室に雑魚寝させられ、プライバシーが全くない」などなど。
でも、今回紹介するのは、そういった誤解を完全に払拭する「まるでクルーズ客船のようなフェリー」です。『クルーズ』誌(海事プレス社)が毎年行っている人気投票「クルーズシップ・オブ・ザ・イヤー」。そのフェリー部門で創設以来26年間、いちどもトップの座を譲ったことがない「日本フェリー界の王者」。それが太平洋フェリーです。
なかでも名古屋~仙台~苫小牧(北海道)を2泊3日で結ぶ「いしかり」は7年連続でグランプリを獲得、同航路に就航する姉妹船「きそ」も3位にランクインしています。その人気の秘密をさぐるため、苫小牧から名古屋まで乗船してみましょう。

毎晩行われるラウンジショー
寄港地の美食ぞろいのレストランと無料ラウンジショー
苫小牧フェリーターミナル出港は19時。船内放送で流れる銅鑼の音が、出発シーンを盛り上げます。まずはレストランへ。「いしかり」のコンセプトはエーゲ海の輝き。エーゲ海ブルーに統一された内装が目にも鮮やかです。
そして目を奪われるのは、インテリアだけではありません。寄港地の北海道、東北、東海の旬の食材を活かした名物料理がズラリと並びます。太平洋フェリーでは朝昼晩と3食すべてバイキング形式を採用。つまり、料理とソフトドリンクはすべて食べ放題・飲み放題なのです。ちなみに「いしかり」のディナーバイキング料金は2,000円(朝昼はいずれも1,000円)。日本のフェリーではやや高い価格ですが、それでもレストランはいつも満席に近い乗客でにぎわっています。それが太平洋フェリーの食事のおいしさを物語っています。
食後は、一流エンターテイナーによるラウンジショーを鑑賞。1時間近く行われるショーは、入場無料。食後のひと時を、誰もが素敵な音楽とともに過ごすことができます。ショー終了後、ラウンジは映画館に早変わり。洋上のシアターで名画観賞もいいものです。

ロイヤルスイートルームで優雅なバスタイムを
船旅ファンの憧れ、ロイヤルスイートルーム
フェリーの船室選びは、長時間の船旅を楽しく過ごすための重要なポイントです。夫婦やカップル、家族連れ、仲の良いグループ、そしてひとり旅。フェリーにはあらゆるスタイルに対応できる船室がそろっています。
「いしかり」には、国内フェリーで最大級の面積52平方メートルを誇るロイヤルスイートルームがあります。リビングとベッドルームに分かれ、大きな窓のあるバスルームでは大海原を眺めながら入浴もできます。もちろんシャワー・トイレ付き。
気になるお値段は、乗船中のレストラン食事券込みで、苫小牧~名古屋でひとり当たり5万6,000円(通常期)!つまり1泊あたり2万8,000円でワンランク上のフェリー旅を満喫できるのです。ロイヤルスイートルームは船内に1室のみ。それだけに予約が殺到する、船旅ファンにとっては「憧れのキャビン」となっています。
なお、「いしかり」で最安値の2等は1万800円、ひとり旅に最適なS寝台は1万4,400円(いずれも苫小牧~名古屋の通常期)と、お手頃な価格で乗船できるのでご安心を。

日本三大史跡のひとつ、多賀城跡
仙台一時下船で寄港地観光も
翌日10時に仙台に入港します。出港は12時50分なので3時間近く停泊となります。
実は名古屋まで乗船の人も、事前に船内で申請しておけば仙台で一時下船ができます。幸い仙台港付近には東北最大規模の「三井アウトレットパーク 仙台港」や「仙台うみの杜水族館」といった人気施設があります。
また、隠れたおすすめが多賀城の史跡巡り。仙台港は多賀城市に近く、タクシーをチャーターして日本三大史跡※のひとつ「多賀城跡」や「多賀城碑」など古代史跡を見て回ることもできます(※他は奈良の平城京跡と福岡の大宰府跡)。時間はややタイトかもしれませんが、寄港地観光もできてちょっとしたクルーズ気分が味わえます。

姉妹船「きそ」とのすれ違い
汽笛を鳴らしあう姉妹船とのすれ違いに感動
仙台を出港し名古屋へと針路をとります。仙台~名古屋の区間は太平洋フェリーのハイライトがいっぱい詰まっています。見逃せないのは、姉妹船とのすれ違い。2隻が汽笛を鳴らしあい、それを合図に両方の乗客がお互いに手を振りあう。船旅、それも太平洋フェリーならではの感動的なイベントです。
姉妹船のすれ違いの後は、ミニコンサートに耳を傾けながらプロムナード(展望通路)の窓から太平洋を眺めるなど、ゆったり時間を過ごせます。また、展望浴場の湯船に浸かりながら眺める太平洋もまた一興です。
そして最終日の朝。右手に伊良湖岬が見え始めると、伊勢湾モーニングクルーズが始まります。デッキからセントレア(中部国際空港)の滑走路から離発着する旅客機が見え、名港トリトンのひとつ名港西大橋をくぐり終えると、太平洋フェリーの船旅も大団円を迎えます。
私は何度も太平洋フェリーで苫小牧から名古屋までの船旅を楽しんでいますが、いつも思うのは、「苫小牧から名古屋までの40時間が楽しくて、あっという間だったなあ」ということ。そして「まだまだ乗っていたいなあ」ということです。

仙台の奥座敷・秋保温泉
2019年デビューの新造船で仙台の奥座敷へ
仙台で下船も太平洋フェリーならではの楽しみです。名古屋発苫小牧行きでは、姉妹船とのすれ違いなどを満喫後、16時40分に仙台に入港します。下船したら、仙台の奥座敷にして奥州三名湯の一つ・秋保温泉を目指しませんか。仙台中心街から1時間もかからないロケーションも最高です。
太平洋フェリーでは「きたかみ」が仙台~苫小牧を往復運航しています。そして2019年1月にはこの「きたかみ」にかわる新造船がデビュー予定。ピカピカの新造船でゆく仙台の温泉旅行。今から楽しみですね。
名称 秋保温泉住所 仙台市太白区秋保町
アクセス JR仙台駅よりバス約50分
(2018年5月13日公開)
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