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【連載】街道を歩いて旅をする「第5回 近世以降の日本の発展の歴史をたどる、北海道・松前街道と札幌本道」

【連載】街道を歩いて旅をする「第5回 近世以降の日本の発展の歴史をたどる、北海道・松前街道と札幌本道」

街道歩きをしていると、思いがけない場所や、考えてもみなかった遠くの場所まで自然と足を伸ばしていることも少なくありません。最初は東海道に沿ってちょっとまち歩きを……などと思っていたのに、気づけば東京から京都まで歩いていたり、さらに勢い余ってもっと遠くに行ってしまったり。

私の経営する散歩かふぇでも、勢い余って(?)徒歩で本州縦断、それどころか鹿児島や北海道まで歩いてしまった方のお話を聞くことができます。街道は、全国津々浦々まで繋がっているのだと実感できるお話です。

今回ご紹介するのは、そんな日本の街道の北の果て、これからの梅雨や猛暑の時期にお勧めの北海道の街道です。

“北の大地”に繋がる街道「松前街道」

「街道歩き」と一口に言っても「街道」は古代の道から現代の道まで多々ありますが、街道歩きを趣味とする人の多くが歩くのは、「五街道」をはじめとする近世の街道です。

この連載にもたびたび登場してきた「五街道」とは、江戸幕府が定めた江戸から各地に繋がる街道のこと。東海道・中山道・日光街道・甲州街道・奥州街道の五つの街道で、西の端は京都とするのが一般的です。

京都からもっと西には本州の西端・山口県の下関に至る山陽道や、そこからさらに九州を縦断する長崎街道、薩摩街道が伸びています。

それでは北へは?と言いますと、五街道の最北端は福島県の白河なのですが、白河から北へも幕府の直轄ではないものの東北の各藩が参勤交代に使った街道がありました。白河までの街道と同じく「奥州街道」と呼ばれ、東北地方を縦断して津軽半島の先端の三厩(みんまや)まで続いています。

その先、津軽海峡を渡った北海道は、近世以前は「蝦夷島」と呼ばれ長らく日本の中央政権の支配の及ばない地域でしたが、アイヌの人々との交易のため、古くから人の往来はありました。

近世に入り、松前氏が日本最北の藩である松前藩の藩主となると、「和人」の活動地域が広がります。

桜が映える松前城です。

日本最北の藩、松前藩の松前城

本州からこの頃の和人の活動拠点であった松前と函館を結んでいたのが、「松前街道」です。

古くは平泉から逃れた源義経が蝦夷地に渡ったという伝説も残るルート。街道として整えられると松前藩の参勤交代や幕府の巡見使の通る道としても使われ、また、測量の旅に出た伊能忠敬の足跡や、戊辰戦争の遺構も残されています。

伊能忠敬蝦夷地上陸の地です。

伊能忠敬蝦夷地上陸の地

海を臨める場所に咸臨丸終焉の碑があります。

咸臨丸終焉の碑

北の大地を行く道で、北海道の自然を感じることのできる道。遅めのお花見や、避暑にも最適です。ただし、鉄道の駅や商業施設のない区間も長く、クマ避け対策も必要になり、全区間通して歩くには少々綿密な準備の要る街道です。

福島に向かう道筋です。

福島に向かう道筋

ゴールは美味しいものも観光名所もいっぱいの函館

北海道の入口・松前から約100km、松前街道の終点は観光地としても人気の函館です。

戊辰戦争の舞台のひとつである五稜郭や、函館市街地の古い町並み、夜景でおなじみの函館山、港町の赤レンガ倉庫や海産市を楽しむこともできます。また、路面電車の市電でちょっと足を延ばして湯の川温泉もお勧め。

ゴール後の観光をお楽しみに歩きたい街道のひとつです。

函館五稜郭の景色です。

函館五稜郭

古い建物が残り、趣のある函館の町並みです。

古い建物の残る函館の町並み

購入したお土産は全国に発送することができます。

食事も買い物も楽しめる函館の朝市。全国への発送もできますので、旅のお土産はこちらでどうぞ

とれたての海産物がたっぷりの海鮮丼はいかがですか。

市場で食べる、とれたての海産物を載せた海鮮丼は絶品です

北の大地を目指し、街道はさらに奥地へ

北海道の街道は、近代日本の発展や交通網の拡張、「お雇い外国人」を通して海外から技術を輸入した歴史をたどるのにも面白いヒントを与えてくれます。

近世以前の和人の活動拠点とされる地域は函館あたりまででしたが、鎖国政策が廃止され函館が外国からの窓口のひとつになると、人の行きかいはさらに増し、より北へと拡張されていきました。

幕末の安政年間、函館から小樽の間に、樺太に渡るための千歳街道(「千歳越」とも)が開通。その道筋を利用して、明治5年から6年にかけて外国人技術者を雇い入れ日本初の洋式馬車道である「札幌本道」が完成し、街道は札幌、小樽へと繋がりました。

森から室蘭までの区間は、かつては内浦湾を船で渡っていましたが、現在はこの船便がありませんので、全区間歩こうとすると内浦湾をぐるりと回って繋がなければなりません。海岸線を長く歩くルートで鉄道の駅や電車の本数も多くはありませんので、やはり綿密な計画が必要になりますが、足腰に自信のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

途中の七飯には、明治天皇の視察に訪れたのを記念する約14kmの松並木があり、「日本の道100選」や「歴史国道」にも選ばれています。また、内浦湾沿いを行けば長万部や有珠山、夏の間は連日花火イベントの開催される洞爺湖温泉も。室蘭から先には登別温泉や、本州からの船のつく苫小牧港など、立ち寄りたい見どころもたくさんあります。

ちょっと寄り道をして登別温泉やクマ牧場に行ってみるのもおすすめです。

ちょっと寄り道すれば、登別温泉やクマ牧場も近くです

札幌時計台です。

ゴールの札幌にある、札幌時計台

全行程踏破にチャレンジしても、美味しいところをつまみ食いしても

「松前街道」と「札幌本道」、前述のとおりどちらも全部歩き通すとなるとかなり歩き応えのある、街道歩きとしてはやや上級編の街道です。

人気のない道を歩く時はクマ避け対策をお忘れなく。

また全行程歩かれるなら、宿泊できる場所とそこまでの距離、そしてその距離を1日で歩き切ることができるかどうかをじっくり検討していきましょう。

これまでにご紹介した初級編の街道や、お近くの散歩道で、1日に最大何キロ歩けるか試していかれると良いと思います。

などと怖いことを言いましたが、徒歩にこだわらず鉄道、バスや自動車でところどころ見て回っても楽しめます。これからやってくる梅雨時、そして猛暑のシーズンに、北海道の旅行に行かれる際にはぜひ、北の大地の街道探訪も行程に組み込んでみてください。

(松前街道の写真の一部は、「散歩かふぇ ちゃらぽこ」の常連街道ウォーカーさんで、松前街道100kmの道のりを3日で踏破してしまったメンチ先輩さんから提供いただきました)

(2018年6月11日公開)

文中に登場した温泉地の宿情報は下記より

湯の川温泉の宿情報はこちら

洞爺湖温泉の宿情報はこちら

登別温泉の宿情報はこちら

その他の北海道の宿情報はこちら

川島 美歩
「散歩かふぇ ちゃらぽこ」オーナー/散歩と旅とコーヒーが大好き。ある日思いつきで東海道を歩き始めたことをきっかけに、街道歩きにハマり、2010年東海道を踏破したイキオイで東京・東高円寺に「散歩と旅」をテーマにした「散歩かふぇ」を開業。以来なかなか遠くへ歩きに行くことが出来ずにいますが、東高円寺の店で街道ウォーカーさん、散歩家さんのお土産話を聞きながら、コーヒーを入れたりカレーを作ったり散歩会のコースやイベントを考えたりしています。休日の散歩は、寄り道したりコーヒーを飲んだり猫を追いかけたりのゆるゆるペースですが、放っておくと20~30kmくらい歩きます。●「散歩かふぇ ちゃらぽこ」( https://charapoko.com/ )